トランプ米大統領は7日、新たに2,670億米ドル相当の中国製品に対し追加関税を課す用意があると表明した。あらゆる中国製品への課税を視野に入れているとみられる。中国で生産されるスマートフォンiPhoneなどアップル製品も対象となり、台湾サプライチェーンが課税コストを負担させられるとの観測も出ている。9日付聯合報などが報じた。

 トランプ大統領は翌8日、この問題でアップルに対し、ツイッターで、「無関税にする簡単な方法がある。中国ではなく米国で生産すべきだ。いますぐ新工場の建設に着手せよ」と米国への生産移管を強く迫った。



 証券会社は、12日に発表されるとみられる今年のiPhone新機種は、追加関税が実施された場合、販売量が1~2割落ちるとみている。▽鴻海精密工業▽和碩聯合科技(ペガトロン)▽英業達(インベンテック)▽仁宝電脳工業(コンパル・エレクトロニクス)▽緯創資通(ウィストロン)──など台湾のアップルサプライチェーンは中国に生産拠点を設けており、証券会社は、iPhone新機種の販売が予想を下回れば、生産設備や人員の余剰、コストの増大によって業績に悪影響が出ると予想している。

 中華経済研究院(中経院、CIER)WTO・RTAセンターの李淳副執行長は、「川上のブランドは、増大したコストを台湾メーカーが負担するよう要求してくるのではないか」と述べ、台湾企業が犠牲になるとの懸念を示した。

 なお、米経済メディア、マーケットプレイスが2014年に発表したレポートによると、iPhoneを米国で生産した場合、1台当たりの生産コストは600米ドルと他国の3倍に跳ね上がる。この場合、iPhoneの販売価格は2,000米ドルに高騰する予測で、中国での生産を継続して関税を課された方がましということになる。

 台湾の受託生産メーカーは現在、ブランド企業から「中国以外に生産拠点を持っているのか」との問い合わせが相次いでいる状況で、既にサーバーなどの分野で「脱中国」の動きが始まっている。

 ウィストロンは、フィリピン・スービックでのサーバー生産再開を米中貿易戦争への対策案の一つとして挙げており、協力メーカーに同地への進出意向を打診したとされる。同社は03~04年に中国・広東省中山市に移転するまでスービックでサーバーを生産していた。

 クアンタも上海で行っているサーバー生産を、ペガトロンは蘇州でのネットワーク機器生産を台湾に戻すとの観測が出ている。

 既に台達電子工業(デルタ・エレクトロニクス)は7月末、米中貿易戦争の影響を回避するためにタイでの生産を強化すべく、タイ関連会社のデルタ・エレクトロニクス・タイランド(DET)への条件付き株式公開買い付け(TOB)を実施し、子会社化すると発表している。

 ただし、第三国でのサプライチェーン構築には時間がかかり、顧客の需要に間に合わない恐れがある。台湾にUターンした場合でも、いわゆる「五欠」(水、電力、労働者、土地、人材の不足)の問題に直面することになり、特に労働者の確保は難題だ。

 こうした現実から、現時点では引き続き中国での生産を続ける企業が大部分で、自動化の割合を高めてコスト削減に努めるといった対応策にとどめている。