台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業の事実上傘下にあるプリント基板を手掛ける鵬鼎控股(アバリー・ホールディングス)が18日、中国・深圳市場に新規上場した。上場に伴う公募増資で約37億元(約600億円)を調達した。米中の貿易戦争が過熱する中、鴻海は米国で1兆円規模の投資を推進する一方、中国では関連会社を相次ぎ上場させている。米中同時接近で活路を探る。

 アバリーの株価は18日、一時公募価格比44%高の制限値幅いっぱいまで買われた。トランプ米政権が対中制裁関税の第3弾を発表した直後という厳しいタイミングで、健闘ぶりが際立った。「国家隊」と呼ばれる中国政府系資金の買い支えがあったとの見方もある。



 深圳が拠点のアバリーはスマートフォン(スマホ)やサーバーなどのプリント基板を手掛け、米アップルも顧客だ。調達資金は江蘇省などでの増産にあてる。鴻海は台湾の関連会社を通じアバリーに80.91%出資する。

 鴻海は6月にiPhoneの組み立てを担う中核子会社、フォックスコン・インダストリアル・インターネット(FII)を上海市場に新規上場させ、約4600億円を調達した。グループの資金調達力を高め、米中西部ウィスコンシン州ではパネル工場建設などに100億ドル(約1兆1千億円)規模の投資を進める。

 鴻海は中国生産した製品を米などに送り出すモデルで成長。米の対中関税にはまだスマホなど主力品は含まれず、足元の影響は限定的だ。ただ米中の応酬の行方次第では拡大する恐れがある。

 トランプ米大統領はアップルに対し今月「いますぐ新工場の建設に着手せよ」と迫った。同社がiPhoneの米生産に乗り出せば、コスト増加分を鴻海などが負担させられるとの見方が強い。FIIの株価は先行き懸念で上場直後の高値から5割近く下落している。