九州電力は十三日、太陽光発電の一部事業者を対象に、発電を一時的に停止するよう指示する出力制御を実施した。太陽光の発電量が増える日中に、電力供給量が需要を大きく上回ることで大規模停電が起こるのを回避するためで、実施は離島を除き全国初。

国が定めたルールでは、原発などの稼働が優先される。今後も電力需要が下がる春や秋の休日に出力制御が頻発する可能性がある。再生可能エネルギーの導入意欲が後退する恐れもあり、政府の再エネ政策が岐路を迎えそうだ。 

政府が東京電力福島第一原発事故を踏まえ、二〇一二年に再エネ導入を促す固定価格買い取り制度(FIT)を導入して以降、太陽光などの導入が進んだ。出力制御が頻発すれば事業者収支への影響は必至だ。



 電力の需給バランスが崩れると、機器の損傷を防ぐため発電設備が自動停止し、最悪の場合は大規模停電に至る。出力制御は、北海道の地震時に発生した全域停電(ブラックアウト)のような事態を防ぐため、調整順を定めた「優先給電ルール」に基づき実施。先に火力発電の稼働を最大限抑えたり、他の電力地域に送電したりしても供給過多が見込まれる場合に行われる。


 出力十キロワット以上の事業者約二万四千件から対象を選ぶ。十三日は四十三万キロワット程度を制御する計画で、熊本を除く九州六県の九千七百五十九件を対象とした。九電の担当者はこれに先立つ記者会見で「対象事業者の選定は公平性に配慮する」と説明した。今回は風力発電の制御は見送った。


 一六年度の日本全体の発電電力量に占める再エネ比率は7・8%(水力発電を含めると15・3%)。このうち九州では太陽光発電の導入が進んでおり、送配電網接続量は一八年八月末時点で、大型原発約八基分に当たる八百七万キロワット。


<解説> 九州電力が全国初の本格的な再生可能エネルギーの出力制御を実施した。再エネ事業者にとっては売電収入が減少することになり、打撃となる。温室効果ガスの排出削減が世界的な課題となる中、導入拡大の基調を後退させないためにも、負担を回避できるような環境整備が急務だ。


 東京電力福島第一原発事故以降、政府は固定価格買い取り制度を整備し、再エネ導入を推進。国のエネルギー基本計画では再エネの主力電源化を打ち出し、二〇三〇年度の電源構成比率で22~24%を目指す。一方、買い取り価格を二〇年代半ばには現在の半額以下に引き下げる方針だ。


 出力制御とのダブルパンチとなれば、再エネ導入の機運は急速にしぼみかねない。広域で電力融通をしやすくする送電網の増強や、太陽光発電の余剰分を取り置ける蓄電池の増設など、出力制御を最大限回避する仕組みづくりが重要だ。蓄電池の増設などには費用もかさむが、政府や電力会社には、こうした課題解決に向けた取り組みを加速する姿勢が問われそうだ。