経営再建中のジャパンディスプレイ(JDI)は3日、台湾の電子部品メーカーや中国の投資ファンドなどで構成する台中連合3社から、出資などで600億~800億円の金融支援を受け入れることで大筋合意した。官民ファンドのINCJ(旧産業革新機構)も支援する。外資への傘下入りでJDIの再建は前進するが、液晶の国産化路線は頓挫することになり、日本の産業史にとっても大きな節目となる。

液晶の中小型パネルを手がけるJDIは3日、台中連合との契約締結について「来週前半をメドに進めている」と発表した。週明けまでに取締役会を開き、正式決議する方針だ。台中連合には台湾電子部品メーカーの宸鴻光電科技(TPK)や台湾金融大手の富邦グループ、中国大手ファンドの嘉実基金管理グループが参加する。

支援のうち400億円強は普通株、残りは新株予約権付社債を使う。台中連合の議決権比率は5割弱となり、新たに筆頭株主になる見通しだ。現在の筆頭株主のINCJの議決権比率は25.3%から半分程度になる。



台中連合との交渉では、JDIの最大顧客である米アップルとの取引条件の見直しが争点となった。アップルは工場建設の際にJDIに貸した資金の未返済分、約1000億円の繰り延べなどの条件を緩和したが、台湾電子部品メーカーの淳安電子(SOE)が最終的に参加を取りやめるなど交渉は難航した。最終的には3社がSOEの出資分を肩代わりする形でまとまる見込みだ。

一方、INCJも台中連合の出資に合わせて追加支援に乗り出す。JDIに対して持つ既存債権のうち約750億円を議決権のない優先株に切り替える。台中勢の出資と合わせたJDIの資本増強額は1100億円超となる。

ただ、台中連合のJDI支援は当事者間の合意ができてもなお不透明要因が残る。米中のハイテク摩擦が長引くなか、対米外国投資委員会(CFIUS)など米国当局が中国企業の出資をどう評価するかが焦点だ。JDIは問題にならないとみているが、LIXILグループはイタリア子会社の中国企業への売却断念に追い込まれた。

JDIは2012年、日立製作所、東芝、ソニーの液晶事業を統合して発足した。日本勢の生き残りを目指し、INCJなど国が再編を主導した。ただ、競争激化で価格が下がり採算が悪化。足元では最大の納入先であるアップルのスマートフォン向けが伸び悩んだことで経営難に陥った。

日本の液晶産業は、1970年代からシャープなど日本勢が電卓向けなどで相次ぎ本格量産に成功し、その後はテレビや携帯電話などに幅広く使われるようになった。ソニーなど10社以上が参入し、1990年代後半まで日本勢が世界シェアの大半を占めた。

ただ2000年代に入り、韓国や台湾企業の大規模投資に追いつけず競争力が低下。16年にはシャープが台湾の鴻海精密工業の傘下に入り、INCJもこれまでJDIに数百億円規模の金融支援を繰り返してきた。JDIが台中連合の傘下に入ると、残るのは京セラパナソニックなど小規模生産を続ける企業だけになり、日本の液晶産業の退潮傾向はさらに鮮明になる。