複数の関係者によると、JDIの経営コンサルタントを務める経営共創基盤は台中連合との交渉が破談になった場合の策として、密かに法的整理のシミュレーションをしていたという。だが、JDIが経営破たんすれば、経産省への責任追及は免れない。総額4000億円近くを支援してきたINCJにとっても巨額の損失に繋がる。もはや、いくら厳しい交渉であってもJDI側から台中連合との交渉を投げ出すことは許されなかった。
 JDIは12日、台中連合から最大800億円の資金調達をすると発表した。その条件は事実上の身売りに等しい。普通株に加えて新株予約権付社債を発行することで議決権は49%に抑える計画だが、支援の条件に過半数の取締役の受け入れが盛り込まれた。
 なお新株の発行価格はわずか50円。2014年上場時の公開価格900円を遥かに下回る。


 JDI内部の混乱も経営判断を遅らせた大きな要因だ。きっかけは、16年12月にINCJがJDIの有機EL開発資金として750億円の金融支援を決めたこと。この頃からJDIの資金繰り不安が注目され始め、経産省とINCJは最高経営責任者(CEO)人事に介入、当時の会長兼CEOの本間充氏を事実上更迭し、東入来信博氏に交代させて事態の収拾を図った。
 その東入来氏は17年8月の就任当初に旧経営陣を批判しながら「有機ELシフト」を訴えて再建スポンサーを探すと表明。既存の液晶工場の巨額減損や人員削減など構造改革で液晶事業の縮小均衡路線に舵を切った。同時に中国スマホ向け液晶の売り上げを切り捨てたことで、アップル依存が一段と高まった。