28日付工商時報などが消息筋の話として伝えたところによると、ノートパソコン受託生産大手、広達電脳(クアンタ・コンピューター)は、林口(桃園市亀山区)の新工場でHP向けにビジネス用ノートPCの生産を行う見通しだ。米中貿易戦争を受けて、中国からの生産移転がコスト面などから困難とされていたノートPCも、台湾への生産回帰の動きが進むようだ。

 観測によると、クアンタはHPが米国市場に輸出するビジネスノートPCの生産のために、新工場のライン2本を確保した。また、米国向け出荷比率の高い宏碁(エイサー)も下半期からクアンタに生産を委託するもようだ。新工場は、昨年11月に中環(CMCマグネティクス)から取得を決めたもので床面積9,000坪。サーバーなどの高単価で自動化比率の高い製品を生産するとみられていたが、クアンタは今月の業績説明会で、ノートPCの生産も計画していると表明していた。なお、新工場はまだ稼働していない。

 工商時報によると、クアンタは新工場でのノートPC受託生産オファー価格を、同業の仁宝電脳工業(コンパル・エレクトロニクス)のベトナム工場より、1台当たり1米ドルも上回らない水準にまで抑えた。意欲的な値下げと台湾生産による高い品質、本社そばの立地で研究開発(R&D)チームによる素早い問題解決が可能なことにより、良品率が不確かな東南アジアでの生産に不安を抱える顧客にアピールしたとされる。



 新工場の生産品目変更は、5月に米中貿易戦争が再燃したことで、HPなど様子見モードだった顧客が生産計画変更を迫られたことも関連している。予定していたサーバー製品については、林口拠点の既存工場の調整によって生産能力を確保したもようだ。

 なお、業界関係者は、林口新工場の規模は小さく、クアンタのノートPC生産の重要拠点である中国・重慶工場を代替するには至らないと指摘した。

 台湾での生産は、人件費が東南アジアを上回ること、台湾人従業員や夜間勤務での人員確保が困難なこと、外国人ブルーカラー労働者比率の上限が25%に制限されることなどの課題もある。

 クアンタは同日、クラウドなど産業向けサーバーソリューションの自社ブランドの創設を発表した。傘下の雲達科技(クアンタ・クラウド・テクノロジー、QCT)が担当する。

 梁次震副董事長は、今年のサーバー出荷は少なくとも2桁成長となるとの見通しを示した。米中貿易戦争の影響が消費者製品に及んでも、クラウドの需要は衰えないとして、今後も研究開発を強化し、1~2年以内に新製品を投入すると表明した。