sharp aquos arシャープ<上>米中貿易戦争の余波でまたも経営危機に直面より続く
 この体質改善に成功した最大の要因は、鴻海から派遣された戴正呉会長兼社長のリーダーシップだろう。多くのシャープ社員は、鴻海からの進駐軍が社内をかき回すと想像していた。ところが戴氏は、単身シャープに乗り込んできた。
その上で、素早い意思決定と300万円以上の決裁はすべて社長自身がやることでコスト意識を徹底、さらには信賞必罰の評価制度を導入し、社員の意識改革を促した。
また、就任直後から社員に対して「狼性を持て」と呼びかけている。「狼性」とは狩猟に出た狼のような企業文化を指す。チャンスをうかがい、積極的にチャレンジする、鴻海の企業文化そのものだ。


戴社長の「狼性を持て」との呼びかけは、その、負け組意識の払拭を狙ったものだった。
 一方、事業戦略としては「量の追求」をやめ「質の追求」に転換することで、収益力の向上を図った。
 以前なら、工場の稼働率を上げるために採算を度外視しかねないところがあった。戴社長は「大切なのは黒字を出すこと」と、極めて基本的なことを徹底した。
 問題は、この次の3年間をシャープは戴社長抜きで戦わなければならないことだ。すでに戴社長は今期限りでの社長交代を公言しており、次期経営計画も次期社長が発表するという。

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