石川県内に有機ELパネルの開発・製造拠点を持つJOLED(ジェイオーレッド、東京)は28日までに、能美事業所(能美市)に世界初の「印刷方式」による生産ラインを構築した。試作に着手し、年内に顧客へサンプルの提供を目指す。2020年にモニター向けパネルの量産を開始し、続いて車載ディスプレー向けパネルの製造を始める計画である。

 ジェイオーレッドは、経営再建中の中小型液晶パネル大手ジャパンディスプレイ(JDI)から能美工場を取得し、18年7月に能美事業所を開設した。「印刷方式」の有機ELパネルの量産では、同事業所で半製品を生産し、千葉事業所(千葉県茂原市)で完成品に仕上げる。



 能美事業所は敷地面積約10万平方メートルで、建物はJDI能美工場から引き継いだ2棟と、今年2月に完成した新棟1棟があり、全体の延べ床面積は約10万4千平方メートルとなる。縦150センチ、横130センチのパネル基板を1カ月に約2万枚生産する能力を備える。

 11月25日に同事業所で生産ラインの完成式を行い、石橋義社長らが出席する。同社は能美、千葉の両事業所で展開する有機ELパネルの量産に総額約1千億円を投じており、地元向けに能美事業所の役割や製品・開発の現状を紹介する。

 能美事業所で量産するモニター向けパネルは、医療用や動画・画像編集用などで、サイズは20~30インチと見込まれる。車載ディスプレー向けは、丸めたり折り曲げたりできる「フレキシブルパネル」の投入を計画する。

 次世代の電気自動車(EV)はメーター部分に加え、さまざまなディスプレーの活用が見込まれ、担当者は「車載向けパネルの用途はこれから広がるだろう」と期待する。

 ジェイオーレッドは16年に石川技術開発センター(川北町)に開発試作ラインも開設している。1カ月の生産能力は縦92センチ、横73センチのパネル基板で約2300枚。現在は21・6インチの医療用・高性能モニター向けに出荷している。