鴻海科技集団(フォックスコン)傘下の液晶パネル大手、群創光電(イノラックス)による701億台湾元(約2,500億円)規模の台湾Uターン投資計画が14日承認を受けた。台商(海外で事業展開する台湾系企業)のUターン投資促進案「歓迎台商回台投資行動方案」として最大規模だ。同社は、中国からテレビ組み立ての生産ラインを移転する他、人工知能(AI)を利用した製造の完全自動化や先端技術への研究開発(R&D)などに投資し、付加価値向上を図る。15日付自由時報などが報じた。

 同社は今回の投資案件について、新たな工場建設や用地取得は行わず、新竹科学工業園区(竹科)竹南科学園区(苗栗県竹南鎮)と南部科学工業園区(南科)の既存の工場棟を利用して、生産能力の拡充を図ると強調した。パネルは中国での生産拡大が供給過剰を招いて価格が下落していること、米中貿易戦争でサプライチェーン再構築の動きが加速していることから、生産能力の拡大競争から付加価値向上へとかじを切る。





 経済部投資業務処の張銘斌処長は、同社は台湾にテレビ組み立ての生産ラインを設置することで、自社ブランドのテレビを海外向けに販売する計画と指摘した。

 この他同社は、南科での完全自動化生産ライン設置、ハイエンドのノートパソコン、ゲーム用(ゲーミング)PC市場向けの狭額縁(ナローベゼル)、高コントラスト比、高リフレッシュレートなどの技術開発を行う。また▽超大型サイズパネル▽ミニ発光ダイオード(LED)▽車載用異形・曲面ディスプレイ▽バーチャルリアリティー(VR)/拡張現実(AR)──などにも投資する。

 経済部上層部は、同社の従来の投資計画は1,000億元規模だったが、「歓迎台商回台投資行動方案」は3年以内に投資を完了する必要があるため、今回の投資は規模を抑えたと明かした。今回の投資が順調に運べば、第2段階の投資を実施する可能性があると指摘した。

 イノラックスは投資案件承認が、母体の鴻海科技集団が第5世代移動通信(5G)や8Kなど高付加価値製品に注力する戦略を表明した直後だったことから、グループ内で重要な役割を果たすことが予想されている。

 特に、5Gの整備でスマート交通ソリューションや自動運転分野での商機が見込まれており、イノラックスのハイエンド車載用ディスプレイが重要部品となるとみられる。この他、スマートホーム向けでも貢献が見込まれ、これらがもたらす商機は計1兆元以上に上るとされる。

 「歓迎台商回台投資行動方案」の年初来の承認は153社、投資額は6,971億元と、7,000億元突破が目前に迫っている。就業機会5万6,000件を創出する見通しだ。

 パネルメーカーではイノラックスの他、友達光電(AUO)の407億元、瀚宇彩晶(ハンスター・ディスプレイ)の79億元の投資案が既に承認されている。3社の投資額は計1,187億元で、全体の17%を占める。

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