キヤノンはスマートフォンやテレビなどで有機ELパネルの採用が広がっていることを受け、有機ELの材料の生産を検討する。カメラなど映像関連の自社製品に搭載するとみられるほか、他社への販売も視野に入れる。デジカメやプリンターといった既存事業が低迷するなか、医療機器や監視カメラなどに続き、材料事業を強化する。

キヤノンの御手洗冨士夫会長が日本経済新聞の取材に「有機ELの材料を自社製にすることを考えている」と語った。有機ELは、同社製品ではミラーレスカメラの電子ファインダーなどに採用されている。高精度の映像を扱う場面が増えてきており、映像制作の機材や医療機器などでも活用が広がる可能性がある。





具体的な生産時期などの計画は今後詰めるが、研究開発部門と、福井県にあるグループ会社、福井キヤノンマテリアルが中心となり、生産に乗り出す見通しだ。キヤノンは有機EL関連の製造装置も手掛けており、外部に販売する際にはそのネットワークも活用できる。子会社のキヤノントッキは有機材料を蒸発させ基板に付着させる工程に使う蒸着装置で、高いシェアを持っている。 企業統治の面では、親子上場する子会社2社について「合併する必要はない」と御手洗氏は明言した。キヤノンマーケティングジャパンはキヤノン製品以外も含めた販売機能を持ち、キヤノン電子は宇宙などの新領域に力を入れている。

国内では東芝などが上場子会社の売却や統合を進め、整理を急いでいる。ただ、御手洗氏は5割超を出資する子会社2社に対して「資本の考えで何かしようとは思っていない。それぞれ専門機能として大きくなってもらいたい」と語った。

キヤノンはデジカメやプリンターなど従来の主力事業が落ち込み、2019年12月期の連結純利益(米国会計基準)は前の期比51%減の1251億円と、10年ぶりの低水準となった。御手洗氏は足元で売上高の25%前後の新規事業を「20年代半ばにもデジカメなどの既存事業を上回る規模にする」と発言。5割超にまで伸ばしたい考えだ。

新規事業では成長分野とみるのが医療機器や監視カメラだ。医療機器の販売網や監視カメラの映像分析ソフトなどに重点投資する。こうした分野のM&A(合併・買収)について「いい案件があればすぐに買う」と御手洗氏は意欲を見せる。

ただ、足元の業績を支える既存事業の落ち込みは深刻だ。カメラ映像機器工業会(CIPA)は、20年のデジカメ出荷台数が前年から23%減少するとの見通しを公表している。プリンターなど事務機の市場も成熟しており、台数の伸びは期待しづらい。

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