米国が15日、中国の通信設備大手、華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ)に対する禁輸措置の強化を発表した中、消息筋によると、ファウンドリー世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)は先週、ファーウェイ傘下のIC設計大手、海思半導体(ハイシリコン)から5ナノ・7ナノメートル製造プロセス製品の7億米ドルの緊急受注があったようだ。TSMCは当初、新型コロナウイルスで第3四半期の最終製品の消費が打撃を受けるとみていたが、この緊急受注でフル稼働となりそうだ。18日付経済日報などが報じた。

米商務省は安全保障上の観点から、米国の製造装置、ソフトウエア、技術を使用して生産した半導体チップをファーウェイに販売する場合、米国政府の輸出許可の取得を義務付ける。米国以外で生産した半導体も対象だ。15日より120日間の猶予期間を設ける。また、昨年5月に発動した、米国由来の技術などの市場価値が製品全体の25%を超える場合、ファーウェイへの出荷を禁止する措置について、一部取引を容認する例外措置の期限を90日間延長したものの、これが最終となると通告した。





 消息筋によると、TSMCは5ナノはファーウェイのスマートフォン次世代旗艦機種向けチップセット「麒麟(Kirin)1020」を、7ナノ強化版(7ナノプラス)は第5世代移動通信(5G)基地局向けプロセッサーを受注したようだ。ハイシリコンからの緊急受注により、5ナノ・7ナノプロセスの受注が満杯となり、生産能力の増強が必要なようだ。

 TSMCは17日、特定の顧客や受注状況についてはコメントしないと表明した。15日発表した米アリゾナ州での5ナノ工場設置計画についてTSMCは、コストと顧客の需要から決定したもので、政治的な思惑はないと強調した。

 米国での新工場設置計画による、ファーウェイへの出荷継続の特権は与えられなかった格好だ。

日本経済新聞は18日、複数の関係者の話として、TSMCはファーウェイからの新規受注を止めたと報じた。

 外資系証券会社は、TSMCの売上高の15~20%をファーウェイが占めており、アップルに次ぐ2位の大口顧客だと指摘した。米国政府の半導体輸出規制強化により、TSMCの今年売上高は最悪の場合9,900億台湾元(約3兆5,400億円)と前年を下回り、従来予測の1兆2,400億元から2割減少すると予測した。

 一方、JPモルガン・チェースのアナリストは、ファーウェイはここ1年で在庫を積み増しており、TSMCの減収幅は2割に達しないと予測した。ただ、在庫積み増しはもろ刃の剣(つるぎ)で、在庫消化のプレッシャーが増すと指摘した。