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「EVやロボットなど三大分野に注力し、事業を刷新する」。23日午前、台湾北部・新北市の本社で開いた株主総会で、劉揚偉董事長(会長に相当)は力を込めた。劉氏は1年前の総会で創業者の郭台銘(テリー・ゴウ)氏から鴻海の2代目トップの座を託された。新たな成長源を自らの手で確立し、2022年には新製品発表を目指す。
「新世代アルファロメオEVの製造・販売計画」。総会直前に開示した有価証券報告書ではこうした記載がある。1月に欧米フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)と中国でのEV合弁会社の設立交渉を始めたと表明。当時具体的な内容は非公表だったが、狙いがアルファロメオの製造にあることが明らかになった。
郭氏は鴻海を一代で年間売上高19兆円規模にまで育てた。ただ成長源だったスマートフォンの生産需要は市場の飽和で減速。主力生産拠点である中国での人件費高騰も足かせとなり、19年12月期まで3期連続の最終減益となった。
郭氏は総統選に出馬するため19年6月にトップから一般の董事(取締役)に退いたが、後に出馬を断念。20年1月にはファンド事業を立ち上げ、鴻海の成長の「タネ」となる投資先を世界で探すと表明。経営実務は劉氏に一任している。最近は健康関連の慈善事業に忙しく、23日の総会にも姿を見せなかった。
ただ重要案件はいまも郭氏への相談が必要とされ、影響力は不変だ。郭氏は「iPhone」で鴻海を飛躍させた。2代目の劉氏が求心力を高められるか。「アルファロメオ」がカギを握る。
鴻海のEV事業はもともと「郭氏の夢」と呼ばれてきた。スマホ頼みの限界を見越し、14年には「市販価格で1万5千ドル(約160万円)のEVを受託製造したい」と表明した。鴻海の売上高粗利益率は足元で6~7%しかない。自動車は採算性が高い半面、参入が難しい。それでもEVであれば電機分野の技術を生かして切り込み、収益性を高められると踏んだ。
15年には中国ネット大手・騰訊控股(テンセント)とEV開発で戦略提携を結び、18年には新興EVメーカー「小鵬汽車」への出資も打ち出した。現状で成果は乏しいが、注目すべきは水面下で部品から徐々に自動車シフトを進めている点だ。
報道などをもとに鴻海の関連会社の事業内容を調べると、少なくとも50社以上がエンジンカバーや液晶パネルなど自動車分野の金属・電子部品を手掛けていることが分かった。劉氏は5月、現地メディアの取材に「既に米テスラに100種類以上の部品を納入している」と明らかにした。
劉氏はFCAに続き2月には台湾自動車大手・裕隆汽車製造(ユーロン)とも自動車開発を担う共同出資会社設立を決めた。ユーロンは日産自動車などの受託生産のほか、台湾や中国で「ラクスジェン」の自社ブランド車を展開してきたが、開発機能を共同出資会社に移す。台湾のシンクタンク・拓●(つちへんに僕のつくり)産業研究院の陳虹燕アナリストは「鴻海はEV戦略を点から面へと進める構えだ」と分析する。
鴻海はスマホなど電子機器の設計能力を身につけ、製造の司令塔役を担うことで受託生産モデルを確立した。同様にユーロンから開発能力を取り込み、自動車そのものの受託生産へと歩を進める狙いだ。ユーロンとの協業は将来FCAとの合弁と連動するといい、アルファロメオの受託生産につなげる構想が浮かび上がる。
ただハードルは決して低くない。EVは複雑な内燃機関が不要で部品点数も少なく、異業種参入の契機になるとみられてきた。だがナカニシ自動車産業リサーチの中西孝樹代表は「量産などの壁は高く、全く簡単ではない」と断じる。実際に英家電大手ダイソンは昨年10月に「商業化のメドが立たない」としてEV開発を中止するなど、成功例がほぼ見当たらない。
当面の焦点はFCAとの合弁事業の行方だ。FCAは年内に発売する新型「フィアット500」で量産車では事実上初めてEVに参入する。EVの出遅れは否めないうえ、自動車全体でアジア大洋州での市場シェアが0.5%にとどまる。鴻海の製造網を活用し、空白地の中国とEV市場に足場を築く狙いだ。
ただFCAは1月時点では2~3カ月以内の合意を目指すとしていたが、直後に新型コロナウイルスの感染が広がり、進展が見えない。劉氏は1月、FCAとの合弁で「2年後(22年)には製品を出荷する」と述べたものの遅れも懸念される。
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