galaxy-z-flip-samsung韓国サムスン電子のスマートフォン部門が横綱相撲を演じている。1台20万円のハイエンドから1万円台の廉価モデルまでをそろえて幅広い地域で顧客を獲得する。同社も感染症の影響は避けられないものの、米中摩擦や中印紛争で打撃を受ける中国勢と比べると相対的に優位な立場にある。逆境下でも市場ニーズに合わせた製品を展開する正攻法でシェア拡大策を進める。

「サムスンは独創と革新をもとにフォルダブル(折り畳み)スマホならではの体験を利用者に提供してきた」。1日に開かれた「ギャラクシーZフォールド2」の発表会で、スマホ部門トップの盧泰文(ノ・テムン)社長は折り畳みスマホのパイオニアであることを強調した。

日本でも発売予定のZフォールド2は、サムスンにとっては折り畳み型で3機種目。ガラケーのように縦方向に折り畳める「Zフリップ」も販売好調で、新しい形のスマホを定着させてきた。





華やかな新製品発表会で紹介する高性能のハイエンドモデルばかりに注目が集まるものの、サムスンは価格が手ごろな「Aシリーズ」や新興国向けに機能を絞った「Mシリーズ」といった幅広いラインアップ約20機種を世界で販売する。

23日に発表した廉価版の5Gスマホもその一環。価格を7万円程度に抑えて顧客の裾野を広げる。出荷台数で世界首位を維持し続ける要因は、この製品ラインアップ抜きには語れない。

サムスンの販売エリアは世界各地にバランス良く広がる。韓国SK証券によると、サムスンの2019年のエリア別スマホ出荷台数は最大比率の中南米でも全体の19%、中東アフリカ16%、アジア(中印除く)15%、西欧14%、北米13%、インド12%、東欧10%と分散する。最大市場の中国での存在感こそ乏しいものの、中国華為技術(ファーウェイ)や米アップルら競合他社と比べて地域偏重は見られない。

先進国で5G対応の高機能モデルや折り畳み型といった最新鋭の機種を打ち出しながらも、新興国向けには機能を絞って価格を抑えた廉価版を拡販する。ベトナム中心にインドやブラジルにも組み立て工場を持ち、生産の現地化も進める。

廉価モデルでも収益を稼げるのは半導体やディスプレー、電子部品といった端末原価の大部分を占める主要部品の多くを自前で手掛けているためだ。半導体やディスプレーの製造装置の減価償却は通常5年で、償却負担の終わった旧世代の装置で作り続ければコストは大幅に浮く。部品から最終製品までを手掛ける垂直統合ならではの強みが生きるというわけだ。

世界の都市封鎖(ロックダウン)に伴うスマホ市場縮小でサムスンも打撃は避けられない。ただ競合はさらに強い逆風にさらされている。

19年の出荷台数世界2位でサムスンを追うファーウェイは米商務省の規制によって先端半導体だけでなく汎用品のメモリーなども含めて調達できなくなった。「事実上の調達網の寸断」(サプライヤー)でスマホ生産を継続できる見通しは立たず、今後のシェア急落は避けられない。

さらにファーウェイ含む中国ブランド全体が直面する中印の国境紛争の影響も深刻だ。インドは中国に次ぐ2番目のスマホ市場で、中国小米(シャオミ)とサムスンがトップシェアを激しく競い合う。インドで中国製品のボイコット運動が広がったことで、サムスンが「漁夫の利」を得る構図となっている。

最大のライバル、アップルは例年に比べてiPhoneの新製品供給に不安を抱える。コロナ影響に加えて中国内陸部のサプライチェーンが長江流域の洪水の影響で部品納入が遅れているもようで、新型iPhone発売後も十分な供給量を確保できるかは不透明な情勢だ。

競合を見渡せば相対的に有利な立場のサムスン。ただ中長期で見ればスマホ市場のコモディティー(汎用品)化によって同社の収益力も伸び悩んでいる。13年のピーク時と比べて19年はスマホ部門の売上高が23%、営業利益は63%減った。最大手サムスンには折り畳み型に次ぐ革新的な新製品を打ち出してスマホ市場の停滞を打破し、市場全体を活性化する役割が求められている。

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