韓国_144dc3fd-s-680x370米国が、中国の投資家による韓国の半導体メーカーの買収を阻止する方向で動いている。これは、戦略的な半導体技術に対する中国のアクセスを抑制する上で、米国の管轄権が大幅に拡大したことを示していると、業界関係筋は述べる。

 対米外国投資委員会(CFIUS)は2021年6月15日(米国時間)、中国のプライベートエクイティファンドであるWise Road Capitalによる、韓国Magnachip Semiconductor(以下、Magnachip)の買収を保留する暫定命令を出した。この措置により、同取引は一時的に保留となったが、米国と韓国の規制当局が国家安全保障上の懸念を理由に、現状の形での買収を許可する可能性は低いとの見方がある。

 Wise Road CapitalによるMagnachipの買収は2021年3月に発表され、2021年後半にも完了する予定だと報じられた。
 同年6月17日に米国証券取引委員会に提出された書類によると、CFIUSはMagnachipのニューヨーク証券取引所からの上場廃止も禁止している。その翌日には、韓国の規制当局がMagnachipのOLED(有機ELディスプレイ)ドライバーICを“国家基幹技術”に指定したと報道された。





ces 2016 st_huaweipc-17 Magnachipは、自動車、通信、民生機器、IoT(モノのインターネット)、産業用アプリケーションに向けたアナログ/ミックスドシグナルICを設計、製造している。同社は、スマートフォンのディスプレイに広く採用されているOLEDのドライバーICを最初に量産したメーカーの1社でもある。一方のWise Road Capitalは、Qualcommも出資している中国の大手スマホメーカーHuaqinにも出資しているファンドだ。

 Magnachipは2021年3月、ファウンドリーサービスグループと、8インチウエハー工場(2つ所有するうちの、より大規模な工場)を約4億3500万ドル相当で、韓国のベンチャー企業2社に売却すると発表していた。Wise Road Capitalからの入札を受け入れた後、Magnachipは、Cornucopia Investment Partnersから、発行済み普通株式全てを取得するという入札を受けたことも明らかにした。

 アナリストによると、Magnachipは米国の証券取引所(NYSE)で取引されてはいるものの、米国市場ではほとんど存在感がないため、今回の買収提案に対するCFIUSの介入は重要であり、恐らく前例がないという。

 米Tuft University Fletcher School of Law and DiplomacyのChris Miller助教授によると、Wise Road CapitalによるMagnachipの買収を阻止するための米韓共同の取り組みは、CFIUSが外国の技術買収に対する管轄権を「大きく拡大した」ことを意味するという。

 Miller氏はforeignpolicy.comに掲載された記事の中で、「Magnachipの技術は先進的だが、特にユニークなものではない。もし、中国に渡してはならない企業のリストを作成するとしたら、Magnachipはそのリストのトップには入らないだろう」と主張している。

 バイデン政権は、中国との経済的なデカップリングを緩和し、半導体などの主要技術について、米国でもレジリエントなサプライチェーンを構築しつつ、競争していくことを提唱している。だが、今回のMagnachip買収阻止の動きは、中国が先端チップ技術にアクセスすることも今なお制限しようとする、米国の方針の一面を示した。

 Miller氏は「この買収の行方は、米国が中国との経済関係をどのように考えているかを示す重要なメッセージとなるだろう」と述べている。

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