マテハン。正確には【マテリアルハンドリング】で、生産拠点や物流拠点でのモノの搬送・管理を行う業務。この領域で世界1の評価を受けているのがダイフク。このコロナ禍でも受注は多く、2021年3月期の増収増益で売上高は史上最高を記録。
背景にはネット通販の伸びで、世界で物流センター投資が相次いでいること。そして人手不足を解決するための自動化ニーズの高まりがある。「ずっと物流の自動化を手がけてきたことで、物流センター建設の際に皆さんに声をかけていただいています」と社長の下代博氏。同社の好業績を支えるのは、この物流センターと半導体領域の2つ。





5G(移動通信システム)や自動運転などで最先端半導体開発が進む中、半導体の生産工場での原材料や部材などの搬送で、ダイフクの物流システムが使われる。「われわれの機械が止まれば、半導体工場が止まってしまう。ですから、責任重大で、絶対に止めてはいけない」という使命を担う。世界的に半導体不足が言われる中、産業界の黒衣としての潜在力をどう掘り起こしていくか─。

昨年1月、新型コロナウイルスによる肺炎が大きくクローズアップされ、武漢が都市封鎖されて、世界中に緊張感が走った。
 日本政府も直ちに対応し、政府チャーター便を同年1月に2便出して、日本人関係者を帰国させた。
「あの2便とも、われわれはお世話になっているんですよ。武漢にいた社員とパートナー会社さんを含めて20数名、30人近くが日本に帰ってきました。自動車関係とか、あとは液晶関係ですね。液晶パネル、テレビのフラットパネルディスプレー関係の大きな工場というのは今、ほとんど中国です」
 コロナ禍が発生した頃はちょうど中国の春節(旧暦の正月)。中国では最も重要とされる祝祭日で、国民も新暦の正月よりも盛大に祝う。
 この時期は、事業会社にとっては設備の点検、修理に当たるタイミング。「わたしどもも、日本と一緒で皆さんが休んでいる間にラインを新しくする。そういう関係でわれわれの人間も現地で作業の指揮をしたり、最後の調整の指示をしている途中で
した」と下代氏は語る。
 マテハン(マテリアルハンドリング)で世界首位のダイフクの事業活動は世界に広がる。
 売上全体の7割は海外であり、社員数約1万2000人の7割は外国籍。グローバルに事業活動を展開すると、こうした危機や地域紛争の影響を受ける場合も出てくる。
 マテハンの仕事は、取引先の生産拠点や物流拠点内での原材料、仕掛品、完成品全ての移動に関わる。そうした搬送、つまりモノの移動をいかに効率よく行うかがマテハンの最大課題。
 搬送コストや時間を最小限にすることで、その工場の運営コストも下がる。製造拠点や物流センターでマテハンの生産性が重要視されるユエンである。

 このコロナ危機下、ダイフクの2021年3月期の決算は増収増益となった。
 売上高は約4739億円(前年同期比6・8%増)、営業利益約445億6600万円(同10・0%増)、経常利益約458億4600万円(同11・9%増)、でROE(株主資本利益率)は13 ・2%(前年同期は12・4%)という内容。
 売上高は過去最大となった。利益面ではコロナ前の2018年度(19年3月期決算)が史上最高益。
 2018年度は、世界で『メモリバブル』が起きた年である。
 そして液晶も大きな需要のうねりが生まれた年。10・5世代で3㍍角ほどの画面サイズ65インチ、75インチといった大パネルの生産工場が中国を中心にどしどし作られた。
 こうした液晶大パネル工場には、清浄な環境が要求され、クリーンルーム内での搬送技術が不可欠。
 マテハン業界でも、このクリーンルーム技術を持っているのがダイフクということで、同社に受注が殺到。2018年度が史上最高益になった背景にこの「メモリバブル」と液晶ブームがあった。
 一時期、特殊要因があったということだが、同社の業績はここ数年、右肩上がりで推移。コロナ禍をものともせず、好業績をあげられる要因について、下代氏が語る。
「やはりeコマースが定着してきたということ、ネット通販ですね。コロナ禍で巣ごもり需要も出て、ネット通販で買うという消費行動も盛んになった。それで物流センターがたくさん建ちました。それと人手不足をどう解決するかという課題ですね」
 人手不足──。ことに物流の領域では人手不足は深刻な問題。
「人手不足の現象が起きている中で、これだけeコマースということになると、小さな単位で商品を集めて、パッケージして出荷するという作業に、普通なら人手がかかるところを、自動化でいこうと。人手不足で、人がいませんという中で、自動化というそのダブルですね。人手がかかるeコマースがどんどん伸びているのに、人手はどんどん少なくなる。そのダブルで、やはり自動化をしなければ仕事が成り立たないようになってきた」
 コロナ危機で人の生き方・働き方が変わり、消費行動も変わってきた。ポストコロナをにらんで、eコマースはますます盛んになり、モノの流れは国境を越えていく。
 世界で今、一番の勢いを感じるのは「北米です」という。
 北米の次は、中国を含めたアジアで、欧州については、「そこまでわれわれが手を広げる現状にはないですね」という下代氏の説明。
 アジアも今後の成長が十分に期待できる。
グローバル展開は地産地消で
「われわれが基本的に今、考えているのはその国に工場をつくって、その国で機器をつくり、お納めすると。もちろん心臓部とか、一部は日本から持ってまいりますけれども、日本と同じようなものが現地でつくれるということをキーにおいています。われわれの機器は大きなものですから。日本から持っていくというのは、非効率的ですからね」
 地産地消──。中国も先述のとおり、上海、常熟、蘇州を三大拠点に、天津、武漢、広州など各有力都市に開発・生産拠点を構える。現在、注力中のインドも最近、M&A(合併・買収)したところの工場に加えて、その横でさらに1つ工場を建設中。
「中国もインドでも地産地消を進めていく。インドで注文をいただいたものは、インドでつくってお納めしようと」
 日本も今、物流システムやマテハン機器の需要は高いが、人口減少が進み、今後を考えると、どうしても海外市場に期待するというのが現実的な選択。
 実際、同社の新工場建設が世界各国で相次ぐ。2019年度、2020年度と米国ではeコマース系の需要に応えるための新工場建設が続いている。
 旺盛な需要が続く中国では、自動車向けの常熟で新工場を増設。半導体、液晶関連の蘇州でも現在、新工場を建設中。 アジアでは、タイ工場も建設中だし、インドも先述のとおり、増設が進む。
 北米では、米国で空港関連のバゲージハンドリングの需要が伸び、いまミシガンで新工場建設が進む。

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