AGCは2日、2021年12月期の連結営業利益(国際会計基準=IFRS)が前期に比べ2.4倍の1800億円になる見通しだと発表した。従来予想(2.1倍の1600億円)を200億円上回る。国内建築用ガラスの値上げなどでガラス事業の採算が改善する。建材に使う塩化ビニール樹脂の需給が一時的に引き締まった効果も大きい。年間配当は210円(従来予想は140円)と前期に比べ90円増やす。

売上高見通しは18%増の1兆6700億円(従来予想は17%増の1兆6500億円)、純利益見通しは3.6倍の1170億円(従来予想は2.5倍の830億円)にそれぞれ引き上げた。北米の建築用ガラス事業の譲渡益250億円を「その他収益」として、7~9月期に計上することも利益を押し上げる。





好調な業績をけん引するのはガラス事業だ。21年12月期の部門営業損益は350億円の黒字(前期は165億円の赤字)を見込む。1~6月期は欧州が新型コロナウイルス禍から想定以上に回復、建築向けで出荷が伸びて設備稼働率が高まった。円安・ユーロ高の恩恵も受けた。加えて国内の建築用ガラス価格は10月1日納入分から10~30%引き上げる方針で、さらなる採算改善につなげる。

塩ビ樹脂を中心とした化学品の価格上昇も貢献する。米国の寒波影響で東南アジアへの塩ビ樹脂の出荷が滞り、東南アジアでの需給が引き締まって価格が上昇した。
営業利益1800億円を実現すれば、13年12月期のIFRS移行後の最高益になる。日本会計基準時の最高益は10年12月期の2292億円だ。当時と収益構造は大きく変わっている。

10年12月期には液晶テレビ用のガラス基板需要が旺盛で、電子・ディスプレイ事業の営業利益は全体の8割強を占めていた。その後は14年12月期まで営業減益が続き、AGCは本格的に事業構造改革に乗り出した。

21年12月期は化学品事業で営業利益の6割強を稼ぐ。塩ビ樹脂などに加えてライフサイエンス分野に注力し、16年には医薬品の製造開発受託(CDMO)に参入。今年7月にはスイスの製薬大手ノバルティスから米国にある遺伝子治療薬工場を買収すると発表した。
平井良典社長は2日のオンライン決算会見で「最高益の2010年から事業構成は大きく変わり、複数の事業から利益を上げられる構造になった」と述べた。改革の進展は株式市場も評価しており、AGC株の時価総額は3月、約2年5カ月ぶりに1兆円の大台を回復した。

21年12月期は塩ビ樹脂の市況効果も利益を押し上げるが「市況はピークアウトしてきている」(宮地伸二最高財務責任者=CFO)。22年12月期以降の中長期成長に向けて事業構造改革は引き続き課題になる。同日発表した1~6月期の連結決算は売上高が前年同期比24%増の8113億円、純利益は5.6倍の638億円だった。

※記事の出典元はツイッターで確認できます⇒コチラ