パソコンに使う液晶パネル価格が約2年半ぶりに下落した。指標品の10月の大口取引価格は前月に比べ2%ほど安い。巣ごもり需要で好調だった世界のテレビ販売の一巡で、テレビ向けパネルの値下がりが続く。メーカーの間でテレビ向けで余った生産ラインをパソコン向けに切り替える動きがみられ、需給が緩んだ。

ノート型パソコンに使う10月の大口需要家向け取引価格は、指標となる15.6型(解像度HD)が1枚43ドル前後。前月より1ドル程度安い。値下がりは2019年6月以来となる。





テレビ向けパネルの値下がりが波及した。指標となるオープンセル(バックライトがついていない半製品)の32型品は、10月の大口取引価格が1枚45ドル前後。9月に比べて10ドル(18%)ほど安い。大型の55型品も同31ドル(17%)安の150ドル前後となった。7月から値下がりが続き、直近ピークの6月からは3~5割ほど安くなった。

巣ごもり需要の一巡でテレビ販売が落ち込んだ。米調査会社DSCCと中国DiScienによると、7~9月の世界の液晶テレビ出荷台数はコロナ禍前の19年7~9月に比べ7%減ったもようだ。

パネルメーカーは夏ごろからテレビ向けで余っている生産ラインを、需要が堅調なパソコン向けに振り向けた。この結果「昨年の今ごろはパネルが手に入らない状況が続いていたが、9月ごろからはタイト感が和らいできた」(PCメーカー)。

供給のボトルネックになっていた半導体不足も、解消の兆しが出ている。品薄だった液晶パネルを制御する部材「ドライバーIC」について、中国の半導体生産受託会社(ファウンドリー)などが生産を拡大した。

英調査会社オムディアの謝勤益シニアディレクターは「解像度が高い一部のドライバーICはまだ不足気味だが、全体的に品薄感は解消に向かいつつある」と分析する。

一方で堅調な需要もあり、下落幅はテレビ向けに比べて小幅にとどまった。米調査会社IDCによると、7~9月の世界のパソコン出荷台数(速報値)は8665万台と前年同期に比べ4%増えた。4~6月の伸び率に比べると鈍化傾向にあるものの、オフィスの業務再開などで企業向けに出荷が続く。

DSCCの田村喜男アジア代表は「テレビ向けはパネル面積全体の7割を占める」としたうえで、「テレビ向けの需給が引き締まらなければ、パソコン向けも来年にかけ下落基調が続きそうだ」と指摘する。値下がりが続けば店頭価格に波及する可能性もある。

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