現代のテレビが映し出す映像の種類は多岐に渡る。地上波から4K/8Kの放送波、VODなどウェブ動画のストリーミング、カメラ映像…。画面解像度、色域、コントラストを異にした画質差のある映像を、千差万別のユーザーの視聴環境のもと、一台のディスプレイが引き受ける。
どんな映像が入ってきても、画質の不足や偏りを補い、快適に視聴できることが求められる。しかし、映像を見つめる喜びを知る者が望むのは、美麗な化粧や演出でなく、高画質なコンテンツと一体化し、撮影監督やカラリストの意図したバランスやニュアンスをありのままに描き出す鋭敏さと、表現の器の大きさなのだ。
パナソニックは2019年の「GZ2000」で、有機ELパネルの独自設計にいちはやく成功して、「JZ2000」はさらに第2世代へと進化させた。
どんな映像が入ってきても、画質の不足や偏りを補い、快適に視聴できることが求められる。しかし、映像を見つめる喜びを知る者が望むのは、美麗な化粧や演出でなく、高画質なコンテンツと一体化し、撮影監督やカラリストの意図したバランスやニュアンスをありのままに描き出す鋭敏さと、表現の器の大きさなのだ。
パナソニックは2019年の「GZ2000」で、有機ELパネルの独自設計にいちはやく成功して、「JZ2000」はさらに第2世代へと進化させた。
従来の一般的なパネル構造では空気層の熱の影響が画質に微細な影響を生み出していたが、放熱特性をコントロールする独自構造で繊細なファインチューンが可能になった。
回路技術も進化していて、画面全体の色情報、輝度情報を分析し、分離して制御し、明部から暗部まで豊かな階調とそこに潜む色彩を浮かび上がらせるが、JZ2000では、入力信号をエリア毎に分析した情報を掛け合わせフィードバックを一段押し進めて、さらに綿密な光と色の表現力を生み出した。
サウンド面も立ち止まっていない。上向きイネーブルドスピーカーに横向きのワイドスピーカーが加わり、合計7つのマルチスピーカーを導入、開発にあたりテクニクスと上下左右の広がり、動きの表現について評価とチューニングを繰り返してきた。リモコン内蔵のマイクでテストトーンを測定し、マルチスピーカーを自動調整できるのも特長だ。
執筆時点で、JZ2000は現行のHDR全方式に対応している。『8K空撮夜景SKY WALK』(HDR10+)は、ヘリで空撮した横浜の俯瞰映像が大画面に映し出された瞬間から没入感を味わえる。暗部のノイズ、階調の潰れといった映像の妨害要素が皆無に近く夜闇の底まで見通すことができ高層ビルが画面に高々とそそりたち、上空を飛んで行く錯覚にとらわれる。
圧巻は後半の新宿歌舞伎町上空の映像だ。それまでの官庁街や都心部とうってかわって、ダウンタウンらしく低層ビルがひしめきあい色彩の響宴になる。JZ2000が描き出すそれは妖艶でリアル。歓楽を象徴する雑多な色彩が明るさに埋没して一様にならず、存在を生々しく主張し競い合う。
輝度と色彩を独立して制御する「Dot ContrastパネルコントローラーPro」はヒストグラムを活用して情報をエリア別にフィードバックするように進歩してきたが、的確に動作していることがこのクライマックスの映像で証明される。
『クルエラ』(HDR10)は、HDRのダイナミックレンジを活かした映像の切れ味に増して中間色の豊富なニュアンスに目を奪われる。バロネスのハウスの中のオートクチュールドレスは原色でなくヤニっぽいシックな中間色の響宴である。JZ2000は控え目なコントラストレンジの中にひしめく中間色の群れを持ち前の広大な色域とパネル制御技術で目も綾に描き出してみせる。
■名画のワンシーンの真意が時を超えて浮かび上がる
『地獄の黙示録 ファイナルカット』(ドルビービジョン)終盤のカーツとウィラードの面会シーンはドルビービジョンのコントラストを得て初めて演出と撮影(ヴィットリオ・ストラーロ)の意図が浮かび上がった。
ジャングルの奥に王国を築いたカーツの顔半分が闇に埋もれているが、JZ2000は隠された表情を絶妙のバランスと節度を持ってあらわに描く。そこに潜むものは「恐怖」である。従来は黒を早く引き込みすぎて潰れて隠されていた。コッポラの深慮に富む演出とマーロン・ブランドの入魂の演技が40年の時間を超えて浮かび上がった瞬間である。
しかし、HDRソフトにも増してJZ2000の真の実力を知らしめたのは、SDRの2KBD『ノマドランド』だった。アメリカ映画は「放浪」を繰り返し描いてきた。古くは1960年代の『イージーライダー』、21世紀になっては『イントゥ・ザ・ワイルド』。アメリカ映画は人間の所業と対比するようにアメリカの自然の荘厳さを哀しいほど美しく映画的に描いてきた。
『ノマドランド』は全編ロケーション撮影だが、過去の映画と異なっていてそこに登場するアメリカの国土は実景以上でも以下でもない。一見ありふれた埃っぽい風景が登場人物にとってはかけがえがなくいとおしいのである。
JZ2000は映画の中のアメリカの素顔に何も足さず引かない。作為や演出がないから、映画をみる者が登場人物の視線と一体になれる。アメリカはそれぞれの心の中にある、という映画のメッセージが浮かび上がる。
JZ2000で見る映像には豊かな気付き、がある。地道な改良の積み重ねで有機ELビエラが掌中にしたものは、映像を愛するものが追い求める「素顔の美」であった。高画質は素顔の美にあり…。不変の事実をJZ2000が教えている。
※記事の出典元はツイッターで確認できます⇒コチラ
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