液晶パネルが値下がりしている。5月の大口取引価格は大型テレビ向けが前年同月比で6割弱安い。新型コロナウイルス下での巣ごもり需要が一巡。物価上昇に伴う消費者の生活防衛により2022年の薄型テレビの世界需要は過去10年で最低水準となる見込みだ。主要部材の値下がりは、テレビの店頭価格にも下げ圧力となる。
大口取引価格は中国や韓国、台湾のパネルメーカーと国内外のテレビメーカーが毎月決める。大型テレビ向けで指標となるTFT55型オープンセル(バックライトがついていない半製品)の5月価格は4月比8%安の1枚96ドル前後。21年5月と比べると57%安い。10カ月連続の下落で、約2年半ぶりに最安値を更新した。
小型テレビ向けのTFT32型オープンセルも2006年の調査開始以降で最低水準に沈む。5月の大口取引価格は1枚34ドル前後と、これまでの最安値だった19年10~12月の同32ドル前後が目前となった。
ヨドバシカメラマルチメディアAkiba(東京・千代田)の遊佐泰彦マネージャは「21年夏はテレビ販売の勢いがよかった」と振り返る。大口取引価格は新型コロナの感染拡大による巣ごもり需要や各国の給付金支給で販売が伸びた20年夏ごろから大きく値上がりした。
その後は巣ごもり需要が一巡し、消費が外食などに向かい始めた21年夏ごろから値下がりが続く。
英調査会社オムディアは22年の薄型テレビの世界需要が21年比2%減の2億884万4千台になると予測する。08年の2億768万1千台以来、14年ぶりの低水準だ。同社の鳥居寿一チーフアナリストは「中国・上海市の都市封鎖(ロックダウン)の影響も大きく、4~6月期だけでみれば前年同期比1割近く落ち込みそうだ」と話す。
買い手となるテレビメーカーは世界的なインフレを含めた先行き不安から液晶パネルの発注を抑えているもようだ。売り手の中国のパネルメーカーなどは販売量の確保を優先し、値下げ要求を受け入れている。
複数のパネルメーカーは直近で生産ラインの稼働率を下げたが「依然として需給に大きなギャップがあり、供給過多だ」(DSCCの田村喜男アジア代表)。
中国のパネルメーカーの採算割れの水準は55型で80ドル台後半、32型で20ドル台後半との見方がある。DSCCの田村氏は「下落余地があり、6月も一段と値下がりする」とみる。
家電量販店などが店頭価格の大きな変動を嫌うため、テレビメーカーが発売後の製品価格を極端に変えることは少ないとされる。液晶パネルの価格変動はテレビメーカーが吸収するのが一般的だ。
それでも直近の液晶パネルの大幅な値下がりは店頭価格に下げ圧力をかけそうだ。半導体や電子部品、物流コストなどが上昇していることから一定程度は相殺されるものの、「じりじりと値下がりする」(オムディアの鳥居氏)との見方がある。
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