Screenshot 2022-07-22 07.05.08液晶パネルの値下がりが続いている。6月の大口取引価格は小型テレビ向けが前月比15%安く、最安値となった。世界的なインフレなどによる景気の減速でテレビの販売が鈍化するとの懸念が強く、テレビメーカーの調達意欲が弱い。パネルメーカーの生産は増えているとみられ、在庫にはなお過剰感が強い。

大口取引価格は中国や韓国、台湾のパネルメーカーと国内外のテレビメーカーが毎月決める。小型テレビ向けで指標となるTFT32型オープンセル(バックライトがついていない半製品)の6月価格は1枚29ドル前後。5月比で5ドル(15%)安く、2019年10~12月につけた同32ドル前後を下回り最安値となった。





大型テレビ向けで指標となるTFT55型オープンセルの6月価格は1枚90ドル前後。5月比6ドル(6%)安く、11カ月連続で下がった。パソコン(PC)向けも下落が続き、ノート型に使うTFT15.6型は6月価格が1枚29ドル前後と、5月から2ドル(6%)下落した。

液晶パネルの大口取引価格はテレビやPCの巣ごもり需要で21年夏にピークとなって以降、下落基調が続く。世界的なインフレで今後の販売が鈍るとの懸念が、価格を一段と下押ししている。

テレビのサイズは一般にリビングルームに置く1台目が大きく、寝室や子供部屋などに置く2~3台目も40型以上のサイズに移行しているとされる。英調査会社オムディアの鳥居寿一チーフアナリストは「大型・高画質・多機能のテレビを買いたいのが消費者心理だ」と話す。

日本のテレビメーカーは大型テレビを中心に、画質や機能性による差異化に力を入れている。中国メーカーが小型の低価格品を得意としていることもあり、付加価値をつけにくい32型の生産意欲が低い。インフレ進行でテレビの販売鈍化が見込まれるため、調達量を絞っているとみられる。

需要が減る一方、供給はむしろ増えているもようだ。調査会社テクノ・システム・リサーチ(東京・千代田)によると、21年の32型液晶パネルの生産量は世界全体でおよそ6600万枚。「22年は最終的に7000万枚を超えるペースで生産が増えている。前年比で1割程度増えそうだ」(同社の林秀介氏)

主に中国のパネルメーカーが32型の生産を増やしているとみられる。従来は利幅が大きい55型などを優先して生産していたが、55型の市況悪化で32型の生産が戻っている可能性がある。中国のパネルメーカーは工場の稼働率の維持を優先するため、需要動向を考慮しない傾向が強い。

液晶パネルは全体的に「在庫の過剰感が払拭されるまでには時間がかかる」(米調査会社DSCCの田村喜男アジア代表)との指摘がある。当面は軟調な相場推移となりそうだ。

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