米アップルが自動車関連技術を蓄積している。専門家と協力し、同社の特許を分析したところ、足元で関連の出願が増えていた。自動運転などソフト分野のほか、シートやサスペンションといった乗り心地に直結するハード関連などの技術も持つ。最近では車とモノとの通信「V2X」に注力している。「アップルカー」を巡る噂が絶えないなか、クルマからモビリティーへの変革に向けた技術基盤の構築を模索しているようだ。
知財分析を手掛ける知財ランドスケープ(東京・中央)の協力を得て、アップルが2000年以降に出願し、6月1日時点で公開されている自動車関連特許を分析した結果、累計248件だった。 特許は出願から公開までに約1年半かかる。
最新の21年の出願分はほとんどが未公開だが、すでに8件が公開済みでこれから23年にかけて順次公開される。21年の同時期には20年出願分の公開は5件で、結果的に27件まで増えた。21年はこれを上回るのはほぼ確実だ。
知財分析を手掛ける知財ランドスケープ(東京・中央)の協力を得て、アップルが2000年以降に出願し、6月1日時点で公開されている自動車関連特許を分析した結果、累計248件だった。 特許は出願から公開までに約1年半かかる。
最新の21年の出願分はほとんどが未公開だが、すでに8件が公開済みでこれから23年にかけて順次公開される。21年の同時期には20年出願分の公開は5件で、結果的に27件まで増えた。21年はこれを上回るのはほぼ確実だ。
21年のアップルの車関連の特許出願、「過去最高水準も」
特許出願は17年をピークに一時失速したものの、知財ランドスケープの山内明最高経営責任者(CEO)は「これから公開されるものを含めれば、21年は過去最高だった17年並みに急増する可能性がある」とみる。
アップルの自動車参入に向けた動きは、14年ごろに遡る。この頃に「タイタン」と呼ばれる自動運転の電気自動車の開発プロジェクトを始め、人工知能(AI)などの研究者を大量に雇ったとされる。iPhoneで創出したスマートフォン市場が成熟しつつあるなか、市場規模が大きく、IT(情報技術)やものづくりの強みを生かせる自動車参入への臆測は絶えない。21年1月に韓国・現代自動車がアップルとの交渉を公表し、その後撤回したものの、「公然の秘密」となった。
アップルは自動車参入について秘密主義を貫くが、特許を分析すると、自動車関連の技術開発の変遷や、3つの特徴が浮き彫りになる。
まずは技術開発の変遷だが、当初はiPhoneとの連携を優先していた。自動車に関連する特許の出願は、初代iPhoneを発売した翌年の08年から本格化した。iPhoneとカーナビを連携する技術が中心で、14年に始めた自動車との連携機能「カープレー」の礎になった。
10年代前半までは年間10件未満にすぎなかった出願が、急増したのは16年で44件と15年(7件)の6倍に増えた。「タイタン」の成果が出始めたとみられ、自動運転の関連特許などを軸に17年には過去最多の66件を出願した。最近では「コネクテッドカー(つながる車)」に必要な通信分野の出願が多い。
強みの「UX」を車でも追求
アップルの強みはIT企業ならではのソフトウエア開発力に加え、iPhoneや「iPad」などのハードウエアを誰もが快適に扱える「ユーザーエクスペリエンス(UX、ユーザー体験)」を追求する徹底的なこだわりにある。出願特許からもこうしたアップルらしさをうかがい知れる。
特許の特徴の一つは窓やドア、シート、サスペンションなど車を構成し、乗り心地にも関わる部材の技術を多く出願していることだ。カープレーのようにソフトだけを志向しているようにはみえない。山内氏は「自動運転に特化したグーグルと違い、アップルは明らかに自動車の自社開発も念頭に特許出願を進めている」と指摘する。
2つ目は完全自動運転の実用化を見据えた出願が散見される点だ。アップルは17年に米カリフォルニア州の公道で市販車を使った自動運転の実証試験を始めた。自動運転で難易度が高い高速道路の合流に関する17年出願の特許は、トヨタ自動車などの特許でも引用されている重要技術だ。
iPhoneで電話を「再発明」(故スティーブ・ジョブズ氏)したように、完全自動運転下で自動車のUXを再発明する意図が透けて見える。例えば、乗員が向かい合って、遠隔にいる人とあたかもその場にいるように会議できる仮想現実(VR)システムなどだ。
3点目の特徴は車とモノとの通信「V2X(Vehicle to X)」に関連する出願が近年急増している点だ。
V2Xは「車と車」「車と道路」「車と歩行者」「車とクラウド」などで、つながる車の次世代版といえる。信号や死角にいる車や歩行者の情報など自動運転の安全性向上に欠かせない情報収集に役立つため、自動車メーカーも注力する分野だ。アップルがドライバーや乗員にとって最も大事な安全性でもUXの革新を追求している様子を垣間見ることができる。
車向けの半導体でも「インテル離れ」
アップルは30件以上の特許を米半導体大手のインテルと共同出願している。多くがV2Xに関わる通信分野で、他社からの引用が多い重要特許もある。20~21年には通信分野の特許を17件出願する一方、インテルとの共同出願は1件で、多くが自社単独での出願だ。
この点はアップルが足元でインテル離れを進めている戦略と辻つまが合う。アップルは自ら半導体を設計・開発した「Mシリーズ」で、搭載製品の消費電力を減らし、操作速度を高めている。山内氏は「自動車でも自社設計の半導体を使おうとしているのかもしれない」との見方を示す。
※記事の出典元はツイッターで確認できます⇒コチラ
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