値上げの波が家電製品にも広がっている。パナソニックホールディングス(HD)は8月1日から冷蔵庫などの出荷価格を最大で約2割値上げする。銅やアルミなどの原材料高騰や半導体不足が長期化し、企業努力だけでは生産コスト増を吸収しきれず、価格転嫁に踏み切った。
すでに日立製作所なども家電を値上げ。小売価格に波及してくる可能性がある。業界関係者は「これまで電機メーカーが白家電の値上げを発表することはあまりなかった。それぐらい異例の状況ということだ」と危機感をあらわにしている。

パナソニックHDによると、8月から値上げするのは冷蔵庫や食洗器、電気カーペットなど約80製品で、値上げ幅は約3~23%になる。炊飯器や掃除機、ドライヤー、オーディオ製品なども9月以降に順次値上げする。





同社の令和4年4~6月期連結決算発表を見ると、原材料や物流費の高騰によるマイナスの影響は560億円に上る。業務用製品の値上げやコスト削減で273億円を打ち消したものの、売り上げの多くを占める家電製品の値上げに踏み切らざるを得なくなった。

同社は、在庫リスクを負担する代わりに家電量販店などと値下げをしない契約を結ぶ「指定価格」制度の導入を進めており、値上げが売れ行きに影響を与えるリスクは他社よりも大きい。決算会見で、梅田博和最高財務責任者(CFO)は「適正価格で安定して販売することで、利益をお客さまのためのより良い製品開発に投入できる」と述べ、消費者へ向けた丁寧な説明を行っていくとした。

このほか、日立は4月から冷蔵庫や洗濯機などの一部製品で新製品の出荷価格の値上げを行っている。生活用品大手のアイリスオーヤマ(仙台市)も6月出荷分から家電を含む自社製品を10%以上値上げした。

また、三菱電機は「各素材や物流費の価格の変化を見極めながら、状況に応じて新製品の値上げを検討する」と説明。シャープは「できる限り企業努力で対応したい」としている。

りそな総合研究所の荒木秀之主席研究員は「コスト上昇の影響が大きく、どこも値上げをせざるを得ない」と現状を説明。値上げと価格指定を同時に実施するパナソニックHDの戦略について「大きなチャレンジだが、他社と差別化してブランド戦略を強化する意思の表れではないか」と話した。

ある電機メーカーの担当者は「大手電機メーカーが値上げを明確に打ち出すのはあまり見た記憶がない。消費者に値上げを理解してもらわないと厳しい状況にどの企業も陥っているのではないか」と危機感を示した。

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