「中国スマートフォン市場のハイエンド価格帯で、アップル(Apple)の『降維打撃』が続いている」

  中国メディアは最近、スマホ業界の現状をそう説明した。「降維打撃」とは、中国で大ヒットし日本でも翻訳されたSF小説『三体(The Three-Body Problem)』由来の言葉で、圧倒的な攻撃を仕掛けること。転じて、「優れた技術力を持つ者が技術で劣る相手に打撃を加える」意味になり、ビジネス界の流行語となった。

 リサーチ会社によると今年上半期、中国で600ドル(約8万6892円)以上のハイエンド市場におけるアップルのシェアは70.5%に上る。米中関係が悪化するたびに米国の象徴として不買運動のターゲットにされるアップルだが、その地位は揺るぎないものとなっている。






 そんな中、中国IT大手の華為技術(ファーウェイ、Huawei)は9月6日、フラッグシップスマートフォンの最新機種「Mate 50」「Mate 50 Pro」を発表した。カメラは独自の画像処理技術「XMAGE」を採用。ワイヤレスで最大50ワットの急速充電に対応し、緊急バッテリー節約モードによりバッテリー残量が1%でも最大3時間、待機状態を維持できるという。ガラスはこれまでの10倍の耐落下性能を兼ね備えている。

 米国による中国への禁輸措置の影響で5Gには非対応だが、初めて通信衛星に対応。砂漠や山間部など携帯電話の基地局がない場所でも、中国独自の「北斗測位衛星システム」を通じてスマホからメッセージを発信できる。

 アップルは9月7日、最新機種の「iPhone14」「iPhone 14 Plus」など4種類を発表。衛星経由の緊急SOS機能を新たに導入する。ファーウェイがアップルの前日に最新機種を発表したのは、通信衛星機能で先手を打ったとの見方がある。

「Mate 50」の価格は4999元(約10万1651円)、「Mate 50 Pro」は6799元(約13万8252円)。iPhone 14の4機種は5999~8999元(約12万1985円~18万2988円)。両社が最新機種を同時期に発売し、中国メディアは「狭路相逢(退路がない状況で敵同士が遭遇する)」と報じているが、スマホ業界では歓迎する声がある。

 今年上半期の中国のスマホ出荷台数は前年同期比14.4%減の約1億4000万台と落ち込んだ。販売台数は16.9%の約1億3400万台で2015年以来最悪の記録となった。その後も7月の出荷台数が前年同月比35%減、8月は9.9%減と上向く気配がない。世界的な半導体不足の影響があるが、それ以上に消費者の買い控えが大きい。「急いで買い替えるほどの革新技術がない。スマホのイノベーションは終わった」という意識から、買い替えサイクルが長期化している。

 消費者の関心が新エネルギー車(NEV)やIT家電に向いている中、アップルとファーウェイの「正面剛(正面衝突)」が話題になることで、スマホへの注目が再び高まるかが注目される。

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