TV panel priceテレビ用液晶パネルの値下がりが止まった。10月の大口取引価格は指標品で前月比1%高となった。値上がりは1年4カ月ぶり。パネルメーカーの生産調整で、サプライチェーン(供給網)全体で積み上がっていた過剰な在庫が減りつつある。

 大口取引価格は、売り手となる中国や韓国、台湾のパネルメーカーと買い手となる国内外のテレビメーカーが毎月決める。

大型テレビ向けで指標となるTFT55型オープンセル(バックライトがついていない半製品)の10月価格は1枚83ドル前後。前月と比べて1ドル(1%)高い。前年同月比ではなお67ドル(45%)安いものの、2021年6月以来の値上がりとなった。





小型テレビ向けのTFT32型オープンセルは1枚27ドル前後。こちらも前月から1ドル(4%)上昇した。32型品は前月まで6カ月連続で値下がりしていた。

新型コロナウイルス禍の「巣ごもり需要」の一服で、テレビ向け液晶パネルの価格は下落が続いた。あらゆるモノの価格が上がるなか消費者が生活必需品の購入を優先し、テレビの販売が低調だったことも重なった。

ここに来て下げ止まったのは、過剰な市中在庫が解消に向かっているためだ。アジアのパネルメーカーは在庫の積み上がりと値下がりを背景に、5月後半から生産調整を進めてきた。

米調査会社DSCCによると、テレビ用液晶パネルの生産ラインの稼働率は9~10月の推定値がともに64%。90%前後で推移していた1~5月から大きく水準を下げた。

台湾の液晶パネル大手、友達光電(AUO)の経営トップの彭双浪・董事長は7~9月期決算発表後のオンライン形式の記者会見で「顧客の在庫調整が響いており、当社の工場稼働率は約50%にとどまった」と述べた。

DSCCがまとめたテレビ用液晶パネルの市中の過剰在庫は、9月末時点で3.1週間分。6月末時点の5.5週間分から大きく縮小し、12月末時点では1.3週間分まで減る見込みだ。

テレビやデバイス製品の販売が伸びる年末商戦が近づいている。購買量を抑制していた韓国のテレビメーカーなどもここにきて、パネル調達を段階的に再開したもようだ。採算が悪化していたパネルメーカーによる値上げ要請を、買い手が受け入れ始めた。

今回の値上がりは供給要因が大きく、価格が上がり続けるかは見通しにくい。DSCCの田村喜男アジア代表は「下がりすぎた取引価格の是正という要素が強い。12月以降にどうなるかはまだ読めない」と話す。

台湾の調査会社トレンドフォースによると、7~9月期のテレビ出荷台数は世界全体で5139万台と前年同期比2.1%減だった。10~12月期も前年割れが続くとみられ、22年通年は前年比3.8%減の2億200万台にとどまると予測する。

同社は「高まるインフレで消費者の購入予算が厳しく制限され、テレビ製品の購入意欲が間接的に阻害されている」と指摘する。

液晶パネルの専門家で、市場調査の経験もある林秀介氏は「ロシアのウクライナ侵攻の影響を受ける欧州の需要が特に振るわない。在庫環境以外は好転していない」とみる。

消費者の可処分所得の大幅な増加は見込めない。年末商戦の需要が想定を下回れば、テレビメーカーは実需に合わない過剰なパネルを抱えることになる。価格の上昇を抑える要因にもなる。

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