クラレ(株式会社クラレ)は日本を代表する大手化学メーカーの1社。1926年に岡山県倉敷市でレーヨンの事業化を目的に設立された会社で、これまでに人工皮革の「クラリーノ」、高機能エラストマーの「セプトン」、合成繊維の「ビニロン」といった製品を生み出してきた。面ファスナーの「マジックテープ」も同社の登録商標だ。
同社の売り上げの約4割は樹脂事業が占めている。特に液晶ディスプレイなどに使用する光学用ポバールフィルムでは世界シェアの8割、ガソリンタンクや食品密封包装などに使用するエバールでは世界シェアの6割を占めるなど、グローバルな活躍が目立つ。
クラレの高収益を支えるのは「ニッチ攻めを貫く」戦略だ。世界シェアの8割を占める光学用ポバールフィルムをはじめとする樹脂事業、水処理や排ガスの不純物除去に使う活性炭事業などのニッチ事業で世界シェア1位を誇る同社は、独自に積み上げた技術と大型海外買収戦略、そして「素早い撤退判断」を巧みに組み合わせることで、グローバル企業へと成長を遂げてきた。
競合が少ない「ブルーオーシャン」を泳げば、価格競争に巻き込まれることなく、安定した稼ぎを得ることができる……。経営の教科書の定石をしっかりと守る優良企業だ。
クラレが米テキサス州ヒューストン近郊に新工場を建設する(12年当時)。操業開始は14年9月の予定で、主力製品のひとつ「ポバール」樹脂の生産を手掛け、全体の2割弱にあたる年4万トンの生産を見込んでいる。同社が米国工場を稼働させる理由のひとつは「シェールガスの活用でコストを下げられる」ことだという。
米国ではシェールガスの増産に伴って天然ガスの価格が大幅に下落。100万BTU(英国熱量単位)当たりの価格は2ドル前後で、08年の2~3割の水準で推移する(12年当時)。ポバールの原料であるエチレンをシェールガスから作る設備も増え、クラレにとっての恩恵は小さくない。
価格競争に敗れて廃業寸前だった繊維メーカー、浅野撚糸(岐阜県安八町)が、新開発のタオルで起死回生を果たした。同社が開発したのは一般的なタオルの1.6倍という吸水性を実現したタオルで、20年8月時点で、累計販売枚数1000万を達成した。新型コロナウイルス禍にあっても月17万枚の販売ペースを維持し続けている。
「中国に勝てる気はしないが、うちにしかできないことはある」と試行錯誤を重ねる中、大きな転機となったのが、クラレの技術担当者から紹介された「水溶性の糸」との出合いだという。
ニッチな樹脂分野を中心に高いグローバルシェアを誇るクラレ。液晶や食品包装材、水浄化用の活性炭など生活やビジネスに欠かせない分野を支えるだけに、コロナ禍にあっても同社の強みは光っている。日本を代表する化学メーカーの成長と活躍に、これからも期待していきたい。
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