素材大手AGCの2022年12月期は、事業環境の変化を受けてアップダウンが激しい1年だった。8月には通期の営業利益予想を上方修正し、過去最高となる2300億円(前年同期比11.6%増)を見込んだ。
だが、11月には一転、1900億円(同7.8%減)へと大幅に下方修正した(通期の結果発表は2023年2月予定)。急変の背景にあった地政学リスクの現実化の影響や、2023年の展望を平井良典社長に聞いた。

――2022年12月期は最高益予想への上方修正のわずか3カ月後に減益予想へと大幅下方修正に追い込まれました。

下方修正の要因の1つ目は塩ビ樹脂で、想定していたよりも市況がかなり落ちてしまったことが響いた。2つ目はディスプレーで、(顧客の)大幅な減産が始まった影響だ。3つ目は自動車向けのガラスで、ヨーロッパを中心とする世界的な原燃材料の高騰がかなり響いてしまった。自動車の生産台数が戻り、ガラスの販売量も戻ってきたので固定費(の負担)はだいぶ薄まった。本来、それで第3四半期(7~9月)頃には利益が戻ると思っていたが、そうはならなかった。





また、建築向けのガラスのほうは、エネルギーサーチャージ(原燃料価格の上下が自動的に販売価格に反映される仕組み)があるが、そのカバー外のところで電気代が歴史的な高値になり、利益を圧縮した。需要自体も若干、弱くなっている気配がある。

――車向けガラスの値上げ状況は。

第3四半期(7~9月)からのエネルギー価格の高騰が想定以上だったことから、価格交渉は2段階交渉のようになっている。非常に厳しい交渉をしている。コスト高の状況はおおよそのお客様にはご理解はいただけていると思う。価格政策がきいてくるのは第4四半期(10~12月)からで、2023年にかけてはもう少しきいてくるはず。数量もおそらく少し戻ってくる。

――原燃料高騰の大半を転嫁するのは難しい部分があります。

自動車業界では、部品は値段が(収め始めた当初から)下がっていくのが慣例だった。ただ、足元ではその状況は変わってきている。われわれも、状況に応じて値上げをするということを、初めて強く打ち出した。

ただ、コモディティ製品であれば値上げは簡単には通らない。原燃料高はコストダウンを進めてしのぐしかないが、それにも限界がある。重要なのはやはり、高付加価値品へのシフト。これをやっていくことで、従来のような、必ず毎年値段が下がるみたいな慣例を変えていかないといけない。高付加価値化をしっかりと進めることで、ガラス事業に対して市場が心配している点を払拭していきたい。