台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業が15日発表した2022年10〜12月期決算は、純利益が9.9%減の399億台湾ドル(約1760億円)となり、4四半期ぶりの減益となった。米アップルの「iPhone」を生産する世界最大の中国工場で、新型コロナウイルスの影響や従業員とのトラブルで稼働率が大きく低下したことが響いた。

売上高も3.9%増の1兆9630億台湾ドルとなり、小幅な伸びにとどまった。
 昨秋、鴻海最大の中国・河南省鄭州市の工場でコロナ感染が拡大し、iPhoneの生産が落ち込んだ。さらに、待遇などを巡る従業員の抗議活動が拍車をかける形で、繁忙期にもかかわらず11〜12月に大きく稼働を落とした。





現在、工場自体は正常化したが、今期の業績も引き続き、厳しい見通しだ。同日、記者会見を開いた経営トップの劉揚偉董事長は「コロナが生み出したIT(情報技術)市場における高成長時代は過ぎ去った。世界的な金融引き締めを受け、消費者の需要減退がみられる」との認識を示した。

具体的には、iPhoneなど主力のスマートフォン事業は鴻海全体の約5割を占めるが、23年12月期は、22年実績比で3〜15%の減収に落ち込むと予測した。その影響から鴻海全体の売上高の見通しも「ほぼ横ばいにとどまる」とした。

台湾の調査会社トレンドフォースによると、世界のスマホ生産台数は昨年、10.6%減少した。足元ではさらに状況が厳しく、23年1〜3月期は前年同期比で18.9%の減少が予測される。

新規の電気自動車(EV)事業は、中核の電池工場を10〜12月期に立ち上げるなどし、500億〜1000億台湾ドル(約2200億〜4400億円)の売上高を見込むと明らかにした。

一方、鴻海の22年12月期通期の売上高は過去最高で、前の期比10.6%増の6兆6269億台湾ドルだった。ただ純利益は1.6%増の1414億台湾ドルと微増。収益力の低迷は顕著で、純利益率は6年連続で1〜2%台にとどまった。