meta surf 202303イギリスのノッティンガム・トレント大学およびオーストラリアのニューサウスウェールズ大学キャンベラ校とオーストラリア国立大学の共同研究チームが、人工的に光学特性を制御したメタサーフェスを活用して、液晶ディスプレイよりも薄く高解像度で消費電力も小さい次世代ディスプレイを実現する手法を考案した。

内径100nm以下の微細孔を350nm間隔で配列した、アモルファスシリコンから成るメタサーフェス・ピクセルの光学特性を、ITO(酸化インジウムスズ)透明導電膜の熱光学効果に基づく局所急速加熱によって高速に電子信号制御するもので、液晶を超える次世代型フラットディスプレイに利用できると期待される。

研究成果が、2023年2月22日に『Light: Science and Applications』誌に公開されている。





テレビやモニターなどのディスプレイにおいては、製造コストや寿命、消費電力に優れた液晶ディスプレイが最も一般的なものだ。共同研究チームは、「現在の液晶やLEDなどによるフラットディスプレイの性能はピークに達しており、さまざまな制約のためこれ以上良くなる可能性は低い」と考え、高解像度と高再生速度を可能にする固体フラットディスプレイ技術の探索を進めている。

物質の光学特性を人工的に操作できるメタサーフェスは、光の波長よりも小さい構造体を周期的に二次元配置して,屈折率など物質の光学特性を自由に制御できる。2000年代以降活発に研究されており、負の屈折率を実現することで光の回折限界を超えて微細な構造を観察できる「完全レンズ」や、圧電薄膜と組み合わせて、焦点距離を小電圧で迅速かつ高精度に変更できる小型軽量のレンズ系などが提案されてきた。

研究チームは、このメタサーフェスに注目して研究を重ね、78nm径および101nm径の微細孔を350nm間隔で交互に二次元配列した、アモルファスシリコンから成るメタサーフェスを作成し、これにITO透明導電膜を積層したデバイスを構築した。そして各ピクセルに対応するITO膜に電圧信号を負荷することにより、熱光学効果に基づく局所急速加熱によってメタサーフェス・ピクセルの屈折率を変化させて、光透過率を高速で制御することに成功し、5V以下の電圧負荷により、625μs以下の立ち上がり時間で光透過率を9倍変化させることを確認した。

研究チームは、液晶ディスプレイ消費電力増大の原因である偏光フィルターが不要で、液晶セルよりも100倍薄く10倍高い解像度が可能だとし、有機材料より長寿命なシリコンで作製されるため、従来のCMOS技術により安価に製造できると説明する。そして次の目標は、より大きなサイズのプロトタイプを製作し、実際に画像を表示させることだとし、今後5年以内に実現、10年以内に次世代型フラットディスプレイとして商品化したいと考えている。

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