2023-03-27_toray 東レは、『高耐久性有機蛍光体の研究・開発と広色域液晶ディスプレイ用波長変換シートへの展開』について、日本化学会より「第28回(2022年度)技術進歩賞」を受賞した。

 このたびの受賞は、高色純度・高効率を実現しつつ、飛躍的に耐久性を向上した有機蛍光体を開発した点、さらに、開発した有機蛍光体を用いて液晶ディスプレイの広色域化に貢献し、かつ毒性元素を含まない、環境に配慮した波長変換シートを創出した点が評価されたもの。
 有機蛍光体は、エネルギーを光に変換する有機材料であり、設計自由度や発光特性の点で優れることから蛍光標識や増感剤として用いられており、近年では電子情報分野やエネルギー分野などのさまざまな先端分野で適用が検討されている。しかしながら、無機蛍光体と比較して耐久性の点で劣ることが多くの用途で実用化の壁になっていた。





 また、スマートフォン等の小型ディスプレイにおいて、有機ELディスプレイへの置き換わりが進む一方、モニターやテレビ等の中・大型ディスプレイにおいては、依然として液晶ディスプレイが大きなシェアを維持している。この液晶ディスプレイにおいて、鮮やかな色調を表示するために、色表現範囲の拡大(広色域化)が求められているが、これを実現する手法として、高色純度発光を示す無機材料である量子ドットが実用化されている。しかし、量子ドットでは、カドミウム(Cd)等の毒性元素の含有の懸念があり、また、Cdを他元素で置換した場合、色純度および効率の低下が課題であった。
 これに対し、東レは、高色純度・高効率を示す既存の有機蛍光体について、詳細な劣化機構の解明を行い、劣化抑制に必要な化学構造・電子状態の考察結果を分子設計に反映することにより、Cd系量子ドットに匹敵する高色純度と蛍光量子収率、大気中でも劣化しにくい高耐久性を兼ね備えた有機蛍光体を開発した。本開発品に係る技術は、長期信頼性が必要な用途への有機蛍光体の適用の一助になることが期待できる。
 さらに、開発した有機蛍光体を用いて波長変換シートを創出し、広色域・高効率・毒性元素フリーを兼ね備えた液晶ディスプレイに採用された。この波長変換シートは、高い発光効率を示し、エネルギーの損失を低減できることから、今後、環境調和・省エネルギー型のディスプレイ開発への貢献が期待される。
 東レは、今後も、先端素材を開発することで地球環境問題の解決に貢献し、企業理念である「わたしたちは新しい価値の創造を通じて社会に貢献します」の具現化に取り組んでいく。

※記事の出典元はツイッターで確認できます⇒コチラ