JOLED能美市能美市に有機ELパネルの開発・製造拠点を持つJOLED(ジェイオーレッド、東京)が民事再生法の手続きを申請し、能美事業所を閉鎖することが明らかになった27日、石川県内にも動揺と落胆が広がった。世界初の技術を発信する工場として期待を集め、県や能美市は多額の助成金を出して支援しており、行政や地元経済関係者からは「裏切られた」「工場はどうなるのか」と不安の声が聞かれた。

 「何も聞いていない。こちらからは何とも言いようがない」。JOLED能美事業所の従業員は北國新聞社の取材に、困惑を隠さなかった。  

日本のディスプレー事業浮上の足がかりとして期待されていたJOLED。その基幹工場である能美事業所が閉鎖されることに対し、地元能美市のショックは大きい。





 井出敏朗能美市長は「能美事業所から有機ELパネル事業の受注は順調だと聞いていた。信じられない」と驚いた様子で話した。

 同市は2020、21年度、能美事業所の機械設備増設を支援するため「企業立地促進助成金」として計2億円を交付。今月27日には22年度分の助成金として1億円の交付を決めたばかりだった。

 助成金交付から5年以内に事業所が閉鎖された場合、市は条例規則に基づいて事業者に返還を求めることができる。担当者は「交付済みの返還に加え、今年度の決定分は取り消し対象となる可能性がある。状況をよく見て判断することになる」と語った。

 能美事業所が立地する能美市岩内町の川口靖之町会長(69)は「地元に有名な企業があるのは地域の自慢だった。さらなる飛躍を期待していただけに残念だ」と悔しさをにじませた。その上で、従業員の解雇に伴う影響を心配し「撤退しても地域経済に与える影響を最小限に抑える努力をしてほしい」と注文した。

 県はJOLEDに対し、「雇用拡大関連企業立地促進」と「創造的産業等立地促進」の2種類の補助金を交付している。交付額は計20億円で、これまでに14億円を支払った。工場を閉鎖した場合は返還を求める可能性があり、担当者は「会社側の話を聞きながら判断する」とした。

  ●馳知事「再就職先支援を」

 馳浩知事は「県内で有機ELディスプレーの量産を進めていただけに、誠に残念」とコメントを出した。従業員の雇用については「人員整理を行う場合には、企業が責任を持って再就職を支援してほしい。県も市町などと連携を図りながら支援する」とした。