価格トレンド202303テレビ用液晶パネルの大口取引価格が全面的に上がった。3月分は大型品で前月比5%高く、小型品も同3%高い。1年近く続いた在庫調整で、市中在庫はおおむね適正水準となった。中国のテレビメーカーが6月の商戦に向けて液晶パネルを積極的に調達した。韓国メーカーも調達を増やすとの観測があり、市場では今後も底堅い値動きが続くとの見方が多い。

 大口取引価格は売り手となるアジアのパネルメーカーと、買い手となる国内外のテレビメーカーが月ごとに決める。 3月の大口取引価格は、大型品の指標となるTFT55型オープンセル(バックライトがついていない半製品)が1枚92ドル前後。前月比4ドル(5%)上がり、2022年5月の同96ドル前後以来、10カ月ぶりの高値をつけた。
値上がりは2カ月連続。

前年同月比では15ドル(14%)安い。 小型品で指標となるTFT32型オープンセルは1枚31ドル前後。前月比1ドル(3%)高く、55型品と同様に10カ月ぶりの高値となった。
値上がりは4カ月ぶり。前年同月比では8ドル(21%)安い。 需要の持ち直しが大口取引価格を押し上げた。





テレビメーカーは物価高による消費者の節約意識の高まりなどにより、1年以上にわたってテレビの販売不振に苦しむ。22年上期ごろから液晶パネルの在庫調整に力を入れ、直近まで新規の調達数量を大幅に絞り込んでいた。

米調査会社DSCCがまとめたテレビ用液晶パネルの市中在庫指数(適正水準=100)は、3月末時点が101.1と22年12月末時点の106.1から5ポイント低下した。直近で最も在庫が膨らんだ22年6月末時点の113.8からは12.7ポイント低い。3月末時点の過剰在庫は0.6週間分と、ほぼ適正水準に落ち着いている。

各社の在庫量には濃淡があるものの、在庫調整を終えたテレビメーカーから調達数量を引き上げる動きが出てきた。

特に中国勢の引き合いが強い。中国では例年6月、電子商取引(EC)大手の京東集団(JDドットコム)が同社の創立記念日にちなんだ大規模セール「618商戦」を展開する。中国のテレビメーカーは同商戦に向けたテレビの造り込みに動き、3月に入ってから液晶パネルの調達を大きく増やしているもようだ。

供給するパネルメーカー側は収益率を改善したい意向が強く、テレビメーカー側に値上げを要求した。中国のテレビメーカーなど需要サイドは調達を優先。供給サイドの値上げ要請が通るかたちでテレビ用液晶パネルは全面高となった。

市場では、韓国のテレビメーカーも4月以降に調達数量を増やすとの見方が出てきている。DSCCの田村喜男アジア代表は「しばらくは堅調な値動きが続きそうだ」と話す。

夏以降も上昇基調が続くかは不透明だ。潮目の変化を受け、アジアのパネルメーカーは製造ラインの稼働率を急ピッチで引き上げている。中国の「618商戦」が振るわなければ、再び在庫が積み上がり、大口取引価格の上値を抑える可能性もある。

テレビ用の有機ELパネルは7四半期連続で値下がりした。1〜3月期の大口取引価格は、大型の65型品が1枚653ドル前後。2022年10〜12月期から13ドル(2%)下落し、前年同期比では112ドル(15%)安となった。流通量が多い55型品は1枚412ドル前後。前四半期比4ドル(1%)安く、前年同期比では44ドル(10%)安い。

前四半期比2〜3%安だった22年10〜12月期と比べて、下げ幅は縮小した。

有機ELテレビは液晶テレビよりも値段が高い上位モデルにあたり、先進国が集まる欧米が二大需要地だ。欧米では物価高の影響から高額商品への支出が細り、有機ELテレビの販売が落ち込んでいる。物価高の影響は液晶テレビよりも色濃い。

各国のテレビメーカーは有機ELパネルの在庫調整を続けており、新規の調達を抑制している。

需要の弱さが大口取引価格に下押し圧力をかける中、供給するパネルメーカーは大幅な値下がりに抵抗した。大手の韓国LGディスプレーなどはこれまでの値下がりで採算が大きく悪化している。前四半期よりも市中の在庫水準が低下していることもあり、下げ幅を縮めた値下がり決着となった。

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