経済産業省が推進した「日の丸連合」による電機業界の再編は、失敗続きだ。その理由を検証して、今後の産業政策に生かさねばならない。

有機ELパネルメーカーの「JOLED(ジェイオーレッド)」が経営破綻した。負債総額は約340億円に上る。生産拠点は閉鎖し、研究開発部門は液晶パネル大手のジャパンディスプレイ(JDI)が引き継ぐという。  

JOLEDは、2015年に当時のソニーとパナソニックの有機EL事業を統合して設立された。官民ファンド「INCJ」(旧産業革新機構)が、約1400億円の投融資を行い支援してきた。

 液晶より薄く画質が鮮明な有機ELは、テレビのほかスマートフォンなどに使われ、ディスプレーの主役となってきただけに、事業が行き詰まったのは残念だ。





 JOLEDは、高画質のパネルを作る先進的な技術を持ち、19年に製造ラインを稼働させた。しかし、安定的な生産体制を確立するのに時間がかかり、量産開始は21年3月まで遅れた。

 生産ラインの設備投資に十分な資金が得られなかったことも、量産化に苦戦した一因だという。コストを下げられず、海外勢との価格競争に勝てなかった。

 もともと、有機ELは日本が技術開発で先行していたが、国の手厚い支援を受けた韓国勢に投資で後れをとった。その上、巻き返しのための事業再編も不調に終わったことで、主導した政府の責任も免れないだろう。

 経産省は、これまでも国際競争力が低下した電機メーカーの部門を再編し、「日の丸連合」で生き残りを図る戦略をとってきた。

 しかし、日立製作所とNECの半導体メモリー部門を統合したエルピーダメモリは、12年に経営破綻した。ソニーと日立、東芝の3社の中小型液晶事業を集約したJDIも、23年3月期まで9期連続で最終赤字となる見通しだ。

 なぜ、国が関与した事業再編がうまくいかないのか。理由を精査しなければ、今後も同じ 轍てつ を踏みかねない。検証を踏まえて、産業政策を練り直すべきだ。

 半導体では、政府が全面的に後押しし、次世代半導体の製造を目指す新会社「ラピダス」が発足した。トヨタ自動車やNTTなどの出資で、「日の丸半導体」を再興しようとするものだ。

 経済安全保障上の重要物資となった半導体で、もう失敗はできない。過去の教訓を生かし、効果的に資金を投じる必要がある。

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