中国の3月の輸出は市場予想に反し、6カ月ぶりに増加に転じたが、コロナ以前の水準にまで回復することは難しいという悲観的な見方が示されている。ベトナムなど東南アジアに製造業の生産拠点が大挙して移転したほか、海外需要の回復が遅れる中、米国による中国とのデカップリング(非連動化)まで重なったためだ。輸出現場では「良い時代は終わった」とし、人材離れの動きも出ている。

 香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポストは17日、世界最大規模の上海・外高橋コンテナ港に空きコンテナが積まれており、往来するトラックも少なく閑散としていると伝えた。
そこに勤めるWさんは「今年に入り少し忙しくなったが、以前と大差はない。過去にはトラックが荷物の積み下ろしで長蛇の列をつくっていたが、今は港内の道ががらがらだ」と話した。





 外高橋港の様子は、最近の指標とは対照的な雰囲気だ。 中国海関総署は13日、3月の輸出が前年同月比14.8%増の3155億9000万ドルを記録したと発表した。これは1-2月(6.8%減)、市場展望(7.0%減)を大きく上回る数値だ。新型コロナの流行期間に中国経済を支えた輸出は、月次ベースで昨年10月に0.3%減となった後、今年2月までマイナスを抜け出せなかったが、6カ月ぶりにプラスに転換した。

現場はそうした輸出回復傾向が続くかどうか不透明視しているほか、構造的な減少傾向に直面したという反応が聞かれる。まず、中国国内の企業がベトナムなど東南アジア各国に生産基地を移転する動きがコロナ期に加速化した。中国で賃金などコストが上昇し、企業は以前から「脱中国」に乗り出していが、さらに中国政府が3年間にわたるゼロコロナ政策に固執したせいで、サプライチェーン不安が高まったからだ。中国の製造業拠点の一つである江蘇省昆山市では工場の10カ所に1カ所が東南アジアに移転したという。

 中国遠洋海運集団(COSCO)の関係者は同紙に対し、「3月以後、海運産業が小幅ながら回復したものの、実質的に改善しているかどうか確認するにはさらに多くの時間が必要で、現時点でどれだけ回復するかを予想するのは難しい」とした上で、「ここ数年間で東南アジアに移転した顧客を取り戻すことは困難だ。コストが安く高品質が保障されるのに戻ってくるはずがない」と指摘した。

 海外市場の需要回復が遅れている点も、中国の輸出回復には障害だ。調査会社のキャピタルエコノミクスは「大多数の先進国が今年、景気低迷に陥ると予想され、海外需要が依然として弱く、金融リスクも浮上し、中国の輸出は今年も引き続き困難に直面するとみられる」とした。輸出指標のサプライズは在庫切れに伴う錯覚だとの分析も出ている。

 さらに米国が中国とのデカップリングを推進している点は、中国の輸出にとって最大の悩みの種だ。中国による3月の輸出額を地域別に見ると、東南アジア諸国連合(ASEAN)向け輸出は35.4%増の564億ドルに伸びたが、これまでの最大輸出先だった米国は7.7%減の436億ドルにとどまった。1-2月もASEAN向けは9%増、米国向けは21.8%減だった。

中国では輸出の経済成長への寄与比率が20%を超えており、輸出が回復しなければ経済成長にも支障が生じざるを得ない。同紙は「中国指導部は今後、経済成長を促進するため、輸出から内需に支援優先順位を転換する必要性を強調しているが、輸出は今年『5%前後』経済成長を達成するための主要課題の一つだ」とした。中国の李強首相も最近、貿易を増やすために「あらゆる手段を動員せよ」と指示した。

 ただ、輸出低迷が長期化し、産業人材は離脱の動きを見せている。2010年から貨物トラックを運転してきたLさんは「上海に登録されているコンテナトレーラーは5万台あるが、今の需要は3万台だ。2021年まで月1万5000元(約29万2700円)を稼いだが、昨年初めからは4000-5000元にすぎない」と漏らし、「トラックを売って新しい働き口を探す。良い時代は二度と来そうもない」と続けた。

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