シャープは11日、前期(2023年3月期)の連結純損益が2608億円の赤字(前の期は740億円の黒字)になったと発表した。赤字転落は17年3月期以来6年ぶり。液晶パネルの市況悪化により、22年に子会社化した堺ディスプレイプロダクト(大阪府堺市)などに関連して第4四半期(1-3月期)に2200億円の減損損失を計上したことが影響する。

赤字額はブルームバーグが集計したアナリスト3人の予想平均の168億円を大きく上回った。シャープは今年2月、前期の営業損益が200億円の赤字になるとの見通しを発表していたが、純損益予想はこれまで開示していなかった。同時に発表した今期(24年3月期)の営業益予想は400億円、純利益予想は100億円と黒字回復を見込んでいる。





  呉柏勲社長は会見で、巨額の最終赤字について「私に責任があり、最大の責任を負っていきたい」と述べた。テレビの価格下落が想定以上だったと振り返り、今期はコスト削減を徹底する一方で海外事業の拡大や新しいビジネスモデルの確立を通して「赤字を黒字に転換し、技術の強いブランド企業という目標に向かって進んでいく」とした。

  10年代前半から液晶パネル事業の不振が続いて経営危機に陥ったシャープは、16年3月に台湾の鴻海精密工業の傘下に入った。鴻海幹部だった戴正呉前社長の下で経営を立て直し、18年3月期には純損益の黒字転換を果たした。

  22年6月にテレビ向けなどの大型液晶パネルを生産する堺ディスプレイプロダクトを子会社化。大型液晶パネルやPC・スマホ向け液晶の市況低迷が業績の悪化につながった。前期のディスプレイデバイス事業の営業損益は664億円の赤字(前の期は203億円の黒字)だった。今期はVRやゲーム向け新機種の立ち上げにより中小型パネル事業拡大を目指すほか、同事業で赤字額の大幅縮小を目指している。

  英調査会社オムディアの早瀬宏アナリストは、新型コロナウイルス禍の影響で世界中でテレビの買い換えが起こった反動で、テレビの需要が「現在は全く動いていない」と指摘。パネルメーカーはどこもかなり苦しい状況で、「シャープも大き過ぎる能力があだとなり、固定費が重くのしかかっている状況」だと述べた。

  シャープはスマートフォン向け中小型液晶パネルでは、20年8月にジャパンディスプレイの白山工場(石川県白山市)の土地と建物を取得した。スマホ市場は米アップルなどが有機ELパネルの採用を拡大しているほか、需要自体も低迷している。

  鴻海も11日に1-3月期の決算を発表。純利益は前年同期比57%減の128億台湾ドル(約560億円)と市場予想の298億台湾ドルを大幅に下回った。鴻海幹部は会見で、シャープに赤字の理由を説明するよう要請したとし、同社経営陣の交代を求める可能性を示唆した。

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