4月27日、三星電子は経営説明会を開催し、2023年1-3月期の経営実績について公表した。これによれば、2023年1-3月期の当期純利益は1.6兆ウォン(2023年4月の平均レートで円に換算すると0.16兆円。以下、同様)であり、昨年の同じ四半期から9.8兆ウォン(0.99兆円)もの減益となった。当然、減収にもなっており、減収減益という厳しい結果であった。

ここで売上高と営業利益について部門別にみてみよう。ちなみに三星電子の主要部門は大きく、IT・モバイル部門、半導体部門、ディスプレー部門の3つである。

まず売上高は前年の同じ四半期から18.0%減少した63.8兆ウォン(6.44兆円)であった。詳しくみれば、IT・モバイル部門は46.2兆ウォン(4.67兆円)、ディスプレー部門は6.6兆ウォン(同0.67兆円)であり、それぞれ前年同期比で、3.8%減、17.1%減であり、IT・モバイル部門は減少こそしたものの、減少幅は小幅であった。





IT・モバイル部門は、市場の不確実性が持続してスマートフォンの需要が弱かったが、新製品であるギャラクシーS23の効果もあり、減少幅がそれほど大きくならなかった。ディスプレー部門は2桁の減収となったわけであるが、これは世界的な景気停滞が影響したようである。

深刻であったのは半導体部門である。半導体部門の売上高は13.7兆ウォン(1.4兆円)であり、前年の同じ四半期と比較して48.9%減と実に半分程度にまで落ち込んでいる。ちなみに三星電子で生産している半導体はメモリーが中心であり、売上高の63.5%がメモリーである。

メモリーが落ち込んでいる理由として、三星電子は、海外の不確実性が持続していることにより、顧客の購買心理が鈍化し、また顧客の在庫調整も持続してことを挙げている。

ディスプレー部門であるが、1.09兆ウォン(0.11兆円)であり、前年同期で0.32兆ウォン(0.03兆円)の減益であった。ディスプレー部門の減益幅はIT・モバイル部門の減益幅とほぼ同じであるが、これはそもそもの売上額が、IT・モバイル部門の方がディスプレー部門よりはるかに大きいからであり、ディスプレー部門の売上高の減少率は2桁であったものの、この程度の減益幅で済んだ。

では今後の三星電子の業績はどうなっていくだろうか。まず、2023年1-3月期にここまで状況が悪化した理由は、半導体需要が世界的に低迷していることにある。

理由の一つとしてはコロナ禍の下での半導体特需が剥落したことが挙げられる。コロナ禍の下では、テレワークなどが急速に普及したことから、コンピュータ需要が増加した。また、データセンターの規模も拡大する必要が生じた。これらは、半導体、なかでもメモリーの需要を引き上げた。しかしながら、ある程度コンピュータが購入され、データセンターの規模が拡大されたところで、需要は一服した。

そしてもう一つの理由としては、世界経済に減速の兆しが見えてみたことが挙げられる。インフレが世界的に進行するなか、これを食い止めるため政策金利の引き上げがなされている。この影響を受け、世界経済は拡大期から後退期に転換しつつある。

WSTS(世界半導体市場統計)が2022年11月末に発表した2022年秋季半導体市場予測によると、2023年における半導体市場は4.4%減少すると見通されている。そして製品別には、ロジックが1.2%の減少する一方で、メモリーが17.0%も減少するとされており、メモリーの減少が大きくなっている。三星電子は、先述したとおり、半導体の売上高のうち、メモリーが63.5%を占めているなど、メモリーを中心に半導体を製造しており。2023年もかなり苦しい状況であるといえる。

新聞報道によれば、三星電子の半導体部門が赤字に陥るのは14年ぶりである。しかしながら、2023年1-3月の半導体部門の赤字は一過性のものではなく、2023年中はかなり厳しい状況が続くと考えられる。韓国経済は、半導体に負うところが大きく、三星電子が韓国経済に占める位置づけも大きい。2023年は、韓国経済にとって試練の年になることは間違いないだろう。

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