ポイント:
●自発光デバイスはディスプレイを中心とした幅広い用途に使用される
●有機ELよりも単純な素子構造で製造プロセスがシンプルな電気化学発光セルの発光層としてデンドリマーとセル ロース由来電解質を使うことで長寿命化出来ることを発見
● 3原色発光の実現とさらなる長寿命化によって環境にやさしい発光デバイスとなることが期待

電気化学発光セル(LEC)*は構造と作製プロセスのシンプルさから有機EL素子に変わる安価な次世代の照明や表示デバイスへの応用が期待されています。しかし、発光材料と電解質の混合がうまく行かないことなどが原因で素子寿命が短いことなどが課題として挙げられています。

 九州大学 先導物質化学研究所のアルブレヒト建准教授、山岡敬子テクニカルスタッフ、ミュンヘン工科大学シュトラウビングキャンパスのRuben Costa教授、Luca M. Cavinato 博士課程学生らの研究グループは、電解質との混合が良好な新規なデンドリマー型*熱活性化遅延蛍光(TADF)材料*を開発しました。







TADF材料は有機ELデバイスにおける第3の発光材料として注目されていますが、親水性の電解質と混ざりにくい疎水性材料が多く、LECへの適用例は多くありませんでした。開発したデンドリマーをセルロース(バイオマス)由来の電解質と組み合わせることで黄色発光を示す活性層をLECへと展開し輝度半減寿命1300時間を達成しました。デンドリマーはこれまでに使用されてきた材料である低分子・錯体・高分子とは異なる新たなカテゴリーの発光材料として期待できます。  今後はデンドリマーの構造を変えることで更なる長寿命化や黄色以外の発光色の実現を通じて環境にやさしい照明や表示デバイスとして展開することが期待されます。  本研究成果は国際学会誌 [Advanced Functional Materials] (WILEY-VCH)に2023年5月16日(現地時間)にオンライン掲載されました。