日本純資産2023財務省は5月26日、『本邦対外資産負債残高(2022年末時点)』を公表した。筆者が継続的にウォッチしてきた年1回の統計だ。

この統計を通じて確認される、日本の「世界最大の対外純資産国」というステータスが、「安全資産としての円」の拠りどころになってきたことはある程度間違いない。 しかし、そのように日本の企業や個人、政府が海外に巨額の資産を保有する現状は、裏を返せば、国内における「投資機会の乏しさ」の証左でもあり、必ずしもポジティブな話ではない。中身を詳しく見ると、日本企業の危機感も透けて見えてくる。

具体的な数字に目をやると、日本の企業や個人、政府が海外に持つ資産から負債を引いた対外純資産残高は前年比7204億円増の418兆6285億円(以下、数字は前年比)と、5年連続の増加を記録。32年連続「世界最大の対外純資産国」のステータスを維持した。





同年の記録的円安にもかかわらず、残高が7200億円程度しか増えていないのは、対外証券投資の価格変動が極めて大きかったからだ。と言ってすぐにピンと来る人はそう多くないはずなので、以下で詳しく残高の内訳を見てみよう。

前年(2021年)末比の残高増減要因(財務省による試算)を見ると、外国への証券投資残高は48.6兆円減少している。

その要因を数量(取引フロー)の変化によるものと、価格(為替相場あるいは資産価格)の変化によるものとに分解すると、まず数量要因で22.8兆円減少。それだけ証券資産が売却されたということだ。

次に価格要因については、為替相場の変動により46.9兆円増加した一方、資産価格の変動(統計では「その他調整」と区分される)により72.7兆円減少した。

欧米の中央銀行による急ピッチの利上げサイクルが続き、その影響で株式市場・債券市場ともに大幅下落を記録した結果、それがそのまま対外証券投資残高の減少という形で表れた。

もっとも、記録的な円安により株価や債券価格下落の6割強が相殺され、対外証券投資残高の目減りは一定程度にとどまったという見方もできる。

その文脈で言えば、今後いま以上に円安が進んでも、それを要因として対外資産残高も増加することになるので、「世界最大の対外純資産国」のステータスはそう簡単に崩れないと思われる(繰り返しだが、それは国内における投資機会が乏しいことの裏返しでもあるので、必ずしもポジティブな話ではない)。

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