Jpn mfg productivity近年、日本のものづくりや製造業の競争力が低下しているという声を耳にすることが多い。
 こうした声に対し、「現実のデータを見れば、日本の製造業が衰退しているというのは間違っているとわかる」と語るのは、ものづくり研究の第1人者で、元東京大学 ものづくり経営研究センター長、現 早稲田大学大学院 経営管理研究科 ビジネス・ファイナンス研究センター研究員・研究院教授の藤本 隆宏氏だ。

 むしろ一方的衰退ではなく、近年は日本の製造業が戦いやすい環境になっており、条件と努力によっては勝てる状況になっているという。なぜそう言えるのか。藤本氏に製造業の現状や展望について話を聞いた。





日本のGDPはいま500兆円強ですが、この30年間、日本経済は500兆円前後でほとんど成長していません。一方、米国、中国、欧州、アジアの多くの国ではGDPはどんどん伸びました。日本は完全に置いてきぼりで、この件の成長戦略はおおむね失敗と言わざるを得ません。

 こうした日本経済全体の停滞感が影響してか、日本の製造業に関しては「製造業全体が競争力を失って、どんどん縮小している」「全面的に空洞化している」というような議論を、この20~30年、かなり多く聞いてきました。しかしそれは、経済理論にも、統計的事実にも、多くの現場の実態にも一致しない、総じて間違った論説だと言わざるを得ません。

 たしかに、テレビや半導体のように、局地戦で大敗した産業分野はあります。しかし、「局地戦で負けたから、製造業全体でも負けている」という製造業悲観論は、部分と全体の混同、つまり誤ったロジックに陥っているのです。

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