3月27日、有機ELディスプレーパネル製造のJOLEDが民事再生法の適用を申請した。負債額は約337億円だった。同社は官民ファンドの産業革新機構(現INCJ)主導の下、2014年7月にJDI、ソニー、パナソニックの有機ELパネル製造事業を統合した企業だ。世界の潮流である蒸着方式とは一線を画した印刷方式での開発、製造が最大の特徴だった。

しかし、世界初の印刷方式は難航した。生産性が高く、安価、高精細をアピールポイントとして19年11月から量産を開始したが歩留まりは悪く、価格は高く、その低稼働率では工場の固定費や高騰する材料費を吸収できなかった。22年3月期の売上高は約56億5500万円、8期連続の最終赤字で約197億円の債務超過。INCJが56・8%の株式を保有する筆頭株主であり、累計1390億円(出資1190億円、融資200億円)もの資金援助をしたにもかかわらず、“日の丸有機EL”は完敗だった。





スポンサーはJDIに決定した。同社もまた、INCJの主導の下、12年に日立製作所、東芝、ソニーの中小型液晶表示装置(LCD)製造子会社を統合して誕生したが苦戦中だ。異なるのはINCJが完全に手を引き、独立系投資ファンドのいちごトラストが長期継続保有、“フルコミットメント”での関与を明言していることだ。
JDIは金融支援するわけではない。工場は閉鎖、工場従業員は解雇され、開発部門の人員、知財だけが同社へ譲渡される。先般、中国の大手液晶メーカー、HKCと提携したJDIは先方が建設する次世代有機ELの新工場に量産技術を提供する戦略を立てている。JOLEDの技術者も立ち上げ要員として活用される見通しだ。

 “国策企業”の夢は破れたが、アジアへの水平展開、ライセンス・ビジネスへの転換で活路を見いだそうとしている両社。戦いはまだ続く。

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