MERC2023年5月30日付、ドイツ・ダルムシュタット発 - 世界有数のサイエンスとテクノロジーの企業であるMerck(以下メルク)は、フレキシブルOLEDデバイスに従来の材料より優れた柔軟性、安定性、耐久性をもたらす新しいバリア材料を発表しました。この革新的な原子層堆積(ALD)材料は今年5月に、世界最大のディスプレイ学会であるSID(Society for Information Display)から2023年ディスプレイ・コンポーネント・オブ・ザ・イヤー賞を獲得しました。

 データが重視されるエレクトロニクスの領域において、完全にフレキシブルなOLEDディスプレイを搭載した自由形状デバイスは、トレンドとして急速に拡大しています。折りたたむ、丸める、広げるなど、伸縮可能なデバイスは、標準的なデバイスに比べてディスプレイモジュールを約60%薄くする必要があります。一方で、OLEDは湿気や酸素に非常に敏感なため、損傷を防ぐためには、適合性が高く柔軟性かつ耐久性に優れた封止材またはバリア材料が求められます。






メルクエレクトロニクス・ビジネスのディスプレイ・ソリューションズ部門責任者であるデミアン・トゥルー(Damien Tuleu)は次のように述べています。「当社は、ディスプレイ材料のパイオニアとして、新しいフォームファクタを実現するソリューションをお客様に提供することに注力しています。最先端の薄膜成膜技術を利用した当社の低温ALDシリコン材料は、バリア性が大幅に改善されており、現行ソリューションの20分の1の厚さであるにもかかわらず100倍の効果を持ちます。これにより、適合性、柔軟性、耐久性が大幅に向上しました」

従来のディスプレイを超え、ウェアラブルデバイス、ローラブルディスプレイ、生物医学デバイスなど、将来性のある新用途に対応するためにはフレキシブルOLEDが極めて重要です。しかしながら、フレキシブルデバイスは曲げ伸ばしが繰り返されることでディスプレイに負荷がかかり、性能や製品寿命の低下を引き起こすおそれがあるという弱点を持ちます。メルクはディスプレイおよび製造装置業界のパートナーと協力し、この課題に対処しました。

メルクは、半導体業界向けに封止材を開発してきた30年間の経験を生かし、低温プラズマALD技術を活用することで、より優れた薄膜封止を実現する新しいバリア材料を開発しました。バリア性を向上させたこの新材料は、OLEDデバイスの長寿命化を実現し、車載用の厳しい要件も満たすことができます。メルクの低温ALDシリコン材料は、2022年に初めて車載用OLED向けに導入され、今後はIT用途のフレキシブルOLEDデバイスにも対応する封止技術となることが期待されています。

OLED技術によって実現される新しいフォームファクタが市場に浸透し続ける中、メルクは本技術を提供する有数のグローバルな材料サプライヤーとしての地位を確立しています。30年間の研究活動とOLED製造設備への早期投資により、高純度OLED材料への需要の増加に対応すべく尽力しています。この取り組みを強化するために、約3,000万ユーロの投資を行い、2022年に韓国と中国でOLED製造能力を拡張させました。現地でOLED製造を行うことで、アジアを拠点とするお客様がOLED材料を簡単かつ迅速に入手できるよう後押しし、より安定性と柔軟性に優れたサプライチェーンの実現を目指します。

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