6月14日、韓国政府は、科学技術情報通信部(MSIT)の主導で、未来ディスプレイ民官協力体の設立式を開いた。MSITのイ・ジョンホ(Lee Jong-ho)長官は、「今まで韓国は民間企業のおかげで、ディスプレイ分野で世界市場シェア1位を保ってきたが、2021年頃から中国に追い抜かれ2位となった。技術の側面で言うと、韓国が絶対的な優位である有機発光ダイオード(OLED)技術も中国との格差が縮まりつつある。
今日の未来ディスプレイ民官協力体設立式を機に、政府・産業界・学界・研究業界が力を合わせ、世界市場シェア1位を取り戻したい」と述べた。

未来ディスプレイ民官協力体設立式の意義は、民間に頼っていたディスプレイ技術開発が産学研官連携にシフトしたことにある。 政府は、メタバースの実現を可能にするリアリティの高いディスプレイ、次世代フリーフォームディスプレイ、融合・複合ディスプレイの技術開発を中心に、次世代のXR機器の開発を支えるオン-シリコンディスプレイへのR&D支援を集中させるとした。





未来ディスプレイ民官協力体の設立式には、サムソンディスプレイ、LGディスプレイをはじめとするディスプレイ業界の代表的な企業と、国家科学技術研究会、韓国情報ディスプレイ協会、韓国ディスプレイ産業協会、大学や研究機関の関係者、計100人以上が参加した。

ディスプレイ・二次電池・半導体等の国家戦略技術を巡る各国の技術競争が激しい中、韓国政府は、今年度3月「国家戦略技術育成に関する特別法」を制定し、MSITは4月6日に、ディスプレイ・半導体・二次電池の技術分野における格差を確保するためのR&D戦略も発表した。

韓国政府は、ディスプレイ分野がデジタル融合・複合と各産業における非対面化の推進により、市場が大きく拡大すると見込んでいる。また、ディスプレイは、IT機器、家電、自動車等の川下産業と半導体、素材・部品・設備等の川上産業と緊密に関わっているので、その重要性を高く評価している。

MSITは、ディスプレイR&D推進戦略も合わせて公開したが、目標は、未来ディスプレイ核心技術の確保と優位にたっている技術を更に強化することで、世界1位を取り戻すことである。

具体的な推進戦略には、以下の3つが含まれる。

    ① 新技術を主導し、新しい市場を開拓する。
    ② 優位に立っている技術の他国との格差を更に広げていく。
    ③ オープンかつイノベーション性のある環境やインフラを整えていく。

MSITは、今まで応用研究・技術開発を中心にR&D支援を行ってきたが、新しい市場を先占するため、来年からはディスプレイ基礎研究支援事業を新たに始めていくとした。

近年は、アップルのビジョンプロ、メタのメタクエストのような、半導体とディスプレイの技術を融合したXR機器の開発が進んでいる。韓国は、これらの機器より高い解像度(6,000ppi)を有するXR機器開発における核心技術である、オン-シリコンディスプレイへのR&D支援と人材育成支援を強化する予定と明かした。

未来ディスプレイ民官協力体設立式では、サムスンディスプレイとLGディスプレイの代表者によるディスプレイ産業におけるプレゼンテーションもあったが、両社はグローバルディスプレイ競争に自信を見せていた。

サムスンディスプレイ副社長は、中国に追い抜かれたのは、技術力ではなく、インフラの問題であり、インフラは民間企業の力で解決できる問題ではないとし、これから官民協力を基盤にするなら競争で勝ち目があるとコメントした。

長年にわたり、韓国はディスプレイ技術分野でトップレベルを保っている。長年技術開発に携わっているだけに、相当なノウハウや専門人材も有しており、韓国のディスプレイ技術は展望が明るいと言える。官民協力で総力をあげディスプレイの世界トップに取り掛かる韓国は、狙い通りに1位と取り戻せるのか。今後の動きが注目に値する。

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