SnapCrab_NoName_2023-6-21_9-43-36_No-00浜松ホトニクスは、独自の熱設計技術を応用し放熱性能を高めることで、耐光性能を世界最高となる700Wと従来製品の約3.5倍まで高めた空間光位相変調器(LCOS-SLM:Liquid Crystal On Silicon - Spatial Light Modulator)「X15213-03CL」を新たに開発した。

この製品は、レーザの照射パターンを自由に制御することができるレーザ金属加工向けの光学部品。金属粉をレーザで焼き固めて航空機部品や輸送機器部品などを成型する金属3Dプリンティングや、レーザによる金属溶接・切断などに応用することで、生産効率を高めることができると期待できる。

今年12月1日より、国内外の金属3Dプリンタメーカーやレーザ加工機メーカーに向けて販売を開始する。また、6月27日~30日まで独バイエルン州ミュンヘンで開催されるレーザやレーザシステム、光学系の世界最大級の専門展「LASER World of PHOTONICS 2023」に出展する。





LCOS-SLMは、液晶の傾きを制御することで入射光の通り道の長さを変えてレーザの位相に差を生じさせることにより、照射パターンを多彩に変化させることができる。浜松ホトニクスは、耐光性能200WのLCOS-SLMをすでに開発、製造、販売しているが、市場からは、金属加工への応用に向け、さらなる耐光性能の向上が求められていた。
 通常、LCOS-SLMは、金属加工に用いる高出力のレーザを入射すると液晶層の温度が上昇し、性能が低下する。このため、耐光性能を高めるには、放熱性能を向上させることで液晶層の温度上昇を抑制する必要がある。
 今回、カバーガラスに従来材料よりも熱伝導率が約30倍高いサファイアを採用することで、液晶層の熱をカバーガラスに伝えやすくした。さらに、LCOS-SLMのパッケージ内部に熱伝導率の高い充填剤を封入するとともに内部構造を最適化することで、カバーガラスの放熱効率を高めている。この結果、LCOS-SLMの液晶層の温度上昇を抑制し、耐光性能を世界最高となる700Wまで高めることに成功した。
 同製品をレーザ金属加工装置に組み込み、レーザを分岐させ多点同時加工を実現することで、生産効率を高めることができると期待される。航空機部品や輸送機器部品を成型する金属3Dプリンティングや、複雑な形状の金属部材を溶接・切断するためのレーザ加工機など、加工に時間がかかる用途での大幅なタクトタイム向上が見込まれる。

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