半導体大手のロームは自動車向け製品が好調だ。特に、炭化ケイ素(SiC)を使い電力損失を少なくした次世代パワー半導体で先行している。7年間で5100億円という大規模な投資の狙いを松本功社長に聞いた。

――自動車の電動化は追い風ですか。

「ガソリン車と比べると電気自動車(EV)には多くの半導体が搭載され、我々にとっての有効需要は2.5倍になる。SiC製を中心としたパワー半導体がパワートレイン(駆動系)向けに急速に伸びている」

「今はシリコン製からSiC製に置き換わっている最中だ。EVはバッテリーのコストが高い。SiCはシリコンに比べて高効率なため、SiCパワー半導体を搭載するとEVの航続距離が伸びる。導入が早かったのは中国だが、今後は米国、欧州、日本と満遍なく伸びる。大衆車にSiCパワー半導体を搭載する動きも大きくなっている」





――どの程度の投資を想定していますか。

「(28年3月期までの)7年間で5100億円の投資を予定している。数年前は年間平均400億〜500億円の投資だったので、ケタ違いに大きい。リスクはあるかもしれないが、成長するためには積極的な投資が必要だ」

――国内外で投資競争が活発化しています。ロームの強みは何でしょうか。

「SiCのウエハーから生産していることだ。09年に買収した独サイクリスタルがウエハー生産をしている。買収当時はまさかここまで需要が高まるとは予想していなかった。ウエハーの生産から開発、製造まで垂直統合方式で生産していることが強みだ。安定的に供給することができ、創業時からこだわっている品質も担保する」

「製造コストを下げるため、ウエハーの大口径化にも取り組んでいる。今は直径が6インチだが、8インチのウエハーを使い歩留まりを向上させコストを削減する。福岡県筑後市の主力工場は6インチでSiCパワー半導体を生産しているが、既に8インチで製造できる設備は整っている。25年にも8インチで量産したい」

――パワー半導体以外でも、EV向けに需要は伸びていますか。

「アナログ半導体の大規模集積回路(LSI)も大きく伸びている。自動車の液晶パネルが大型化するなど電装化が進んでいるほか、先進運転支援システム(ADAS)も普及すれば半導体需要は増えていく」

――アナログ半導体の強みは何ですか。

「顧客と擦り合わせをしながら、要求にマッチした特性を持った製品の開発ができることだ。1990年代、日本の家電メーカー向けに要望に応じて設計をするカスタム製品をつくり一緒に成長させてもらった。その時の経験がLSIの生産にもいかせている」

「開発はこれまで培ってきた人材がいるが、生産ライン構築のための人材が課題だ。(半導体産業が集積する)熊本県では人材獲得を争っていると聞く。主力工場を持つ子会社のローム・アポロ(福岡県広川町)は地元で信頼があり、立地も良い。そのメリットを生かしながら人材を集めていきたい」

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