Screenshot 2023-08-17 09.06.10韓国で8月、画期的なテレビが発売された。サムスン電子の83インチ4K有機ELテレビ「KQ83SC90AE」。テレビの性能が画期的なのではない。サムスンが宿敵LGからパネルを調達しており、両社の共闘を象徴するためだ。

サムスンがLGディスプレー(LGD)から調達するのは、「白色有機EL」と呼ばれるパネル。有機EL材料を白色に光らせてカラーフィルターで赤・緑・青の光に変換する仕組みで、パナソニックやソニーなどの有機ELテレビにも採用されている。

世界のテレビ市場で激しい販売競争を繰り広げてきた首位サムスンと2位LG電子。サムスンはLGのカラーフィルターで色づけする白色有機ELを「偽物の有機EL」と非難し、自社の優位性をアピールしたこともある。それほどにサムスンは有機EL技術では他社に負けていないとの強烈な自負心を持っていた。





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ただ、サムスンはカラーフィルターを使わずに微細な赤・緑・青の発光材料を使う方式にこだわり、テレビ向けの大型パネルでは歩留まり(良品率)向上に苦戦した。スマートフォン用の小型パネルでは圧倒的なシェアを獲得した半面、大型パネルでは発光材料を微細に塗り分ける技術が難しく、コスト競争力を十分に高められなかった

こうした経緯から、サムスンにとってLGからパネルを調達するのは対外的にLGの技術力を認めることになり、有機EL技術の競争で譲歩するに等しい。

それでも両社は手を組んだ。背景には中国勢の台頭がある。

液晶パネルでは中国の京東方科技集団(BOE)が世界首位に立った。採算悪化によってサムスンは液晶からの撤退を迫られ、LGDも国内生産を中断することを決めた。

液晶の次は有機ELだ。中国では地方政府の補助金を受けてBOEのほか、華星光電(CSOT)や維信諾科技(ビジョノックス)も有機ELパネルの巨大工場を建設しており、韓国2社のシェアをじわり侵食する。

幸い、最終製品のテレビではサムスンとLG電子を合わせて世界シェア45%程度(金額ベース)を維持する。両陣営がパネル調達で連携すれば、パネル工場の稼働率も向上し収益確保につながるというわけだ。

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かつて日本勢が隆盛を極めたディスプレー産業は2000年代に韓国と台湾企業が台頭し、日本勢は縮小・撤退を迫られた。今度は韓台が中国企業に追われる番だ。

液晶での敗戦が有機ELでも再現されるのか。主敵に浮上した中国を討つための韓国2強の呉越同舟戦略の成否は、幅広い分野で中国と対峙する韓国産業界の未来を左右することになる。

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