官民ファンドが「日の丸有機EL」の夢を託したJOLED(ジェイオーレッド)が3月、経営破綻した。パナソニックホールディングス(HD)とソニーグループの事業を統合して発足したが、安定生産に苦戦。日本のエレクトロニクス産業が誇った「世界初」の製造技術が、散った。世界の壁は高かった。
3月に経営破綻したJOLEDの社長を務めていました。当社は2015年の設立から国産有機EL技術の事業化に挑戦してきました。
パナソニックHDとソニーグループの有機ELの開発部門を統合し、事業を始めました。世界初の有機ELテレビを発売したソニーグループ、世界初で「印刷方式」と呼ばれるディスプレー製造方式を実用化したパナソニックHD。両社の技術資産を継承し、韓国や中国が席巻するディスプレー市場で再起を目指しました。
技術力は世界トップと自負していました。しかし量産ライン立ち上げの遅れや需要の低迷によって事業継続が難しい状況に陥りました。従業員、取引先や株主など関係者の期待を裏切る形になって本当に申し訳ありません。
「日本のエレクトロニクス産業史に『技術で勝って事業で負ける』という事例がまた1つ加わった」。そう捉える方がいるかもしれません。ですが、従来と異なる日本ならではの勝ち筋が確かに見えていたのです。
まず日本勢としてベストな布陣で挑みました。パナソニックHDとソニーグループに加え、有機EL材料で世界トップクラスの住友化学、車載用有機ELパネルを必要とするデンソーなどに出資していただきました。株主に技術、素材、顧客がそろっていたのです。
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[JOLED社長]
石橋 義氏
1964年生まれ。90年に学習院大学大学院修了、ソニー(現ソニーグループ)入社。ジャパンディスプレイの源流の一つのソニーモバイルディスプレイを経て、2015年にJOLED執行役員、18年から現職。1990年代から有機ELを手掛けた。
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