65mz_sついに出揃った各社の2023年最新テレビ。今季は各社が採用している有機ELパネルにも違いが生まれており、麻倉怜士氏は「有機ELテレビ戦線異常あり」と表現する。その理由と、各モデルの気になったポイントを独自の目線で解説する。

有機EL戦線“異常の予兆”は去年から

――シャープが7月25日にQD-OLED採用モデル「AQUOS FS1」を発表して、各社の2023年テレビのフラッグシップ機が出揃いましたが、改めて2023年の有機ELパネルの状況を振り返りましょう。

麻倉:今年の有機ELテレビ戦線は異常あり、です。“異常の予兆”は去年からありました。これまでLGディスプレイだけだったパネル供給メーカーにサムスンディスプレイが加わったのです。

そもそも、有機ELの画質は2014~15年くらいから大きくは変わっていません。あの時点で画質という面では、すでに液晶を凌駕していました。つまり、当時ライバルは液晶しかおらず、その液晶よりも圧倒的な高画質を持っていたわけです。その差は説明不要で、誰が見てもわかるものでした。





だから、それ以降にLGディスプレイが取り組んできたことは、例えば「スピーカーなしでも画面から音が出る」、「フレームがない」、「曲げたり、巻き取ったりできる」といった、今までのディスプレイにはなかった機能性や発展性、応用性などの訴求でした。それはとてもユニークでしたね。

ところが、2021年くらいにサムスンディスプレイのQD-OLEDが出てくるという噂が立ち始めました。それまでテレビに使うような大型の有機ELパネルは白色有機ELでしかできないと言われていました。

実際、サムスンディスプレイも一度RGB塗り分け方式の有機ELパネルの製造に失敗しています。当時は55型、2Kパネルでしたが、たいへん少ない良品率だったと言われています。とにかく失敗が多すぎて、結局サムスンは自滅するような形になりました。

しかし、その後サムスンディスプレイは液晶にQDシート(量子ドットシート)を組み合わせたQD液晶を頑張り、そのQD技術を有機ELに導入するという噂が2021年ごろに出始めた。こうして、LGディスプレイのお尻に火がついたわけです。

聞くところによると、LGディスプレイが昨年導入した「OLED.EX」や、今年の「META」パネルは、本来、もっと後に投入するつもりだった技術らしいのです。

Read full article