台湾半導体産業が近年、急速な発展を遂げる中、液晶パネル製造装置を手掛けてきたメーカーは相次いで半導体製造装置の分野に重点をシフトしている。

 台湾パネル産業は2010年に生産額が1兆台湾元を超え、従業員10万人以上の花形産業として隆盛を誇り、パネルの材料や設備の需要も盛り上がっていたが、中国メーカーの台頭により衰退し、台湾のパネル大手、友達光電(AUO)と群創光電(イノラックス)は近年、新工場をほぼ建設していない。
一方、台湾半導体産業の生産額は22年に4兆8000億元に達した。

 こうした中、パネル設備メーカーの多くは、数年前から半導体設備の分野に参入し、受注獲得に成功している。





スパッタリング装置メーカーの友威科技(UVATテクノロジー)は、アップルのiPhoneなどのスマートフォン用パネル向けサプライヤーとして有名だが、22年の売上高の約半分は半導体設備によるものだった。同社は欧州の半導体メーカーやイノラックスから受注している。

 友威科技は16年からスマホ用パネル向け市場で激しい値下げ競争に巻き込まれ、赤字続きとなった。そこで、世界的な優位性を誇る台湾半導体産業向けに方針転換することにした。

 16年に発売されたiPhone7シリーズに搭載されたプロセッサー「A10」は、ファウンドリー最大手、台湾積体電路製造(TSMC)の先進パッケージング(封止)、集積ファンアウト(InFO)を採用していた。友威科技は、TSMCのウエハーレベルパッケージ(WLP)向け設備の受注を狙っても、海外の半導体設備メーカー大手には勝てないと判断し、IC基板ではなくプリント基板(PCB)やガラス基板を使用するパネルレベルパッケージング(PLP)向け設備を開発することに決めた。
そして1億元以上を投じて開発を進め、20年にPLP向けスパッタリング、エッチング装置の開発に成功した。ちょうどその頃、IC基板が深刻な供給不足となっていたため、PLPを採用する欧州の半導体メーカー大手から引き合いがあった。

 ただ、すぐには受注につながらず、友威科技は約2年間、前払金も受けられないまま、同半導体メーカーの認証を得るために装置の試作を無料で行い、22年にようやく受注を獲得した。その後、イノラックスが手掛ける先進パッケージング向けの装置も受注した。イノラックスは23年9月に開催された半導体業界の国際展示会、国際半導体展(セミコン台湾)で、半導体のファンアウト・パネルレベルパッケージング(FOPLP)技術を発表している。

 友威科技の22年売上高に占める半導体設備の割合は45%に上昇し、粗利益率は46%と16年の2倍余りに上昇、純利益は株式の店頭公開以来の最高を記録した。

 主にイノラックス向けのパネル設備を手掛けてきた東捷科技(コントレル・テクノロジー)と、主にAUO向けのパネル設備を手掛けてきた均豪精密工業(ギャラント・プレシジョン・マシニング、GPM)は23年6月、共同で半導体の先進パッケージング向け設備を開発すると発表した。

 東捷科技の親会社で、工作機械大手の東台精機(東台マシン&ツール)の厳瑞雄・董事長は、他の設備メーカーと提携しなければ海外メーカーに勝てないと説明した。

 20年に均豪精密との提携を発表した設備メーカー、志聖工業(CサンMFG)の林彦亨・総経理室特助は、均豪精密、東捷科技とはエンジニアの相互支援も行うと明らかにした。

 一方、パネル設備メーカーが半導体設備の分野に参入する上では、半導体人材の不足と、新規参入に多額の投資を要することがネックになる。また、光電業界での勤務経験を持つある半導体企業の総経理は、半導体業界特有の考え方に発想を転換できなければ、競争の激しい半導体設備市場では生き残れないと指摘した。

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