「A氏の経歴や以前の給与水準などからみて、中国の零細業者に本当に就職したのか疑わしく、それまでの経歴と関係のない会社に就職した理由も納得できない」

 サムスンディスプレイが昨年退社したA氏を相手取り起こした転職禁止の仮処分申し立てが裁判所で最近認められた。A氏は2008年にサムスンディスプレイに入社後、2012年から有機発光ダイオード(OLED)生産のための工程開発業務グループ長として勤め、昨年1月に退社した。会社はA氏と2年間の転職禁止条項などを盛り込んだ誓約書を交わし、約定金として約8700万ウォン(約961万円)を支給した。  

ところが、A氏が昨年8月、中国のある小型医療用レーザー治療機器メーカーに就職すると、会社側がそれを問題視した。資本金1000万元(約2億1000万円)、従業員数7人にすぎない零細企業で、サムスンディスプレイのライバル会社とは言えない。しかしサムスンディスプレイ側は「う回就職」だと主張し、裁判所もその可能性があると判断した。退社後すぐにライバル会社に就職していなくても契約による転職禁止が有効だとした。





先端技術を巡る国家間競争が激しくなる中、韓国の政府・国会は産業技術流出犯罪を厳しく処罰するための関連法と制度を整備している。それに伴い、裁判所の判決もますます技術保護主義の色彩が強まっている。会社と退職者が結んだ転職禁止契約についてはう回就職の可能性があるか、これまではライバル企業と見なしていなかった企業への転職であっても効力を認める判決が出ている。

  ソウル中央地裁は今年6月、サムスン電子が米マイクロンに転職した元研究員B氏の転職禁止を求める仮処分申し立てを認めた。B氏は1998年に入社した後、24年間にわたりDRAM設計業務を担当した。 2018年からは核心技術情報へのアクセス権限も与えられた。昨年4月に退社した後、米マイクロンの日本支社に入社し、今年4月からは米国本社で働いている。

 裁判所によると、サムスン電子はB氏に特別インセンティブと1~2年の年俸に該当する転職禁止約定金支給を提案したが、B氏は断った。B氏は代価を受け取っていないなどの理由で転職禁止約定は無効だと主張したが、裁判所は認めなかった。裁判所は「DRAM技術は国家核心技術であるため、職業選択の自由を一部制限しても公共の利益がある」とし、2年間の転職禁止が妥当だと判断した。

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