LG OLED g韓国のLG Display(LGディスプレイ)はなぜ大型テレビ用の有機ELパネルの量産化に成功できたのか。2009年に開発を始めて以来、数々の困難を乗り越えた結果、基本構造は白色有機EL+IGZOに決まった。だが、本当の意味での量産化実現には、あと2つの問題を解決しなければならなかった。

有機ELパネルの量産化実現に向けた2つの問題のうち、1つは補償回路だ。むらや経年変化が生じたときに、画素単位で電気的に補正する回路である。ところが2009年から生産の立ち上げを指揮した呂相徳氏(取材当時はLGディスプレイ・チーフマーケティングオフィサー、現在はLGディスプレイ顧問)は大胆にも、この回路構造を根本的に変えたのである。
それは2013年の55型の量産開始直前。突然のことだった。






それをやり遂げたのが、もともと液晶の専門家で、量産技術のエキスパート、呉彰浩氏(取材当時はLGディスプレイ専務、現在はLGエレクトロニクス日本研究所所長)だ。「呉氏は『有機ELはできない』と一番大きな声で主張していた技術者」(呂氏)ということだ。「だから、あえて彼(呉氏)に有機ELを担当してもらったのです。最高に優秀な技術者なので、彼ならなんとかしてくれると託しました」(呂氏)

液晶の場合、補償回路は軽い規模で済む。しかし、有機ELではTFT素子のスイッチトランジスタが自身で補償動作を行わなければならない。呉氏は次のように解説する。「液晶はデジタル駆動ですから、データをオンとオフできちんとスイッチングできます。一方、有機ELはアナログ駆動です。スイッチでオン/オフしたとしても、アナログなので、ちょっとでも電流が変動するとむらが出るのです」

 当初の内部補正は、すべての画素の内部にスイッチを6~7個入れ、トランジスタ特性も含めてセンシングし、内部スイッチで補正する方式を採用していた。ところがそれを量産直前に、外部から補正する方式に大変更したのだ。