O4168726005122023000000-3テレビ用液晶パネルの市況が悪化している。11月の大口取引価格は大型の指標品が前月比2%安く、1年2カ月ぶりに下落した。個人消費の停滞で世界的にテレビ販売が伸びず、在庫が膨らんだテレビメーカーが調達を抑制している。パネルメーカーは早くも生産調整に入ったようだ。

大口取引価格は売り手となるアジアのパネルメーカーと、買い手となる国内外のテレビメーカーが月ごとに決める。
11月の大口取引価格は大型品の指標となるTFT55型オープンセル(バックライトがついていない半製品)が1枚125ドル前後。前月比2ドル(2%)安く、2022年9月以来、1年2カ月ぶりに値下がりした。前年同月比では39ドル(45%)高い。






小型品で指標となるTFT32型オープンセルは1枚35ドル前後。前月比2ドル(5%)安く、2カ月連続で下落した。前年同月比では5ドル(17%)高い。

テレビ販売の鈍さが大口取引価格の下落につながった。

台湾の調査会社トレンドフォースによると、23年10〜12月期のテレビ出荷台数は世界全体で5455万台となる見込みだ。前四半期比で4.7%増えるが、前年同期比では1.7%減となる。23年全体は前年比2.1%減の1億9700万台にとどまる予想だ。

同社は「欧米では高金利環境によって消費者の購買予算が依然として制約されている」と指摘する。中国では不動産会社の相次ぐ経営不安から住宅販売が縮小しており、新居への移転に伴うテレビの買い替え需要がしぼんでいるようだ。

テレビメーカーは23年中の販売回復を想定し、春から夏にかけて液晶パネルの調達を増やしてきた。引き合いが強まったことで大口取引価格も夏まで上昇基調が続いた。

だが、実際の販売回復ペースは鈍く、足元では液晶パネルの在庫が積み上がっている。米調査会社DSCCがまとめたテレビ用液晶パネルのサプライチェーン(供給網)在庫指数(適正水準=100)は12月末時点が103.8と、9月末時点の103.1より0.7ポイント悪化する。過剰在庫は12月末時点で2.0週分となる見込みだ。

テレビメーカーはこれ以上の在庫の積み上がりを避けるために、液晶パネルの調達数量を一段と絞り込んでいる。需要の弱さが大口取引価格に下押し圧力をかけ、55型品、32型品ともに当面は下落基調が続くとの見方が多い。

今後はパネルメーカーの生産調整の動向が焦点となりそうだ。

液晶パネルの大口取引価格は21年秋ごろから22年秋ごろにかけて大幅に下落した経緯がある。当時は新型コロナウイルス禍における「巣ごもり需要」の反動が広がる中、シェア拡大を優先した中国のパネルメーカーの生産調整が遅れ、需給バランスが大きく崩れた。

シェアで7割近くを占めるに至った中国のパネルメーカーは過去の市況悪化を踏まえ、早くも生産調整に動いている。DSCCによると、世界のテレビ用液晶パネルの生産ライン稼働率は10〜12月期が80%と、7〜9月期の89%から9ポイント低下する。稼働率の低下は24年1〜3月期まで続く見込みだ。

同社の田村喜男アジア代表は「供給過剰に転じて早期に生産調整を進めるのは過去にない動き。パネルメーカー各社が足並みをそろえて生産調整を維持できるかが注目される」と話す。

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